医師の米国留学にはどんな種類がある? レジデンシー・フェローシップ・研究留学・大学院進学を解説

米国留学ガイド

医師の米国留学にはどんな種類がある?
レジデンシー・フェローシップ・研究留学・大学院進学を解説


「いつかアメリカで医療を学んでみたい」「海外留学に興味はあるけれど、どのような選択肢があるのかわからない」という医学生・若手医師は少なくありません。

一口に「米国留学」といっても、その形はさまざまです。大きく分けると、①臨床留学、②研究留学、③学位取得の3種類があります。

さらに臨床留学の中にも、米国で専門医トレーニングを一から受ける「レジデンシー」と、日本などですでに専門研修を積んだ後に、より専門的な分野を学ぶ「フェローシップ」があります。

本記事では、医師・医学生が米国で学ぶ代表的な方法について、それぞれの特徴や応募方法、USMLEが必要なのかどうかを整理して解説します。

目次

  1. 米国留学は大きく3種類に分けられる
  2. 臨床留学① レジデンシー
  3. 臨床留学② フェローシップ
  4. 研究留学
  5. 学位取得(Ph.D.・MPH・MBAなど)
  6. それぞれの米国留学の違い
  7. まとめ

米国留学は大きく3種類に分けられる

医師が「アメリカに留学する」と聞くと、アメリカの病院で医師として働く姿をイメージするかもしれません。しかし、実際にはすべての留学で患者さんを診療するわけではありません。医師・医学生の米国留学は、大きく以下の3つに分けることができます。

  • 臨床留学:米国の病院で医師として診療しながらトレーニングを受ける
  • 研究留学:大学や研究機関の研究室に所属し、基礎研究・臨床研究に従事する
  • 学位取得:米国の大学院に進学し、Ph.D.、MPH、MBAなどの学位を取得する

このうち、実際に米国で患者さんを診療する「臨床留学」では、原則としてUSMLEやECFMG Certificationなどの手続きが必要になります。一方、研究留学や大学院留学では通常、USMLEを受験する必要はありません。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

臨床留学① レジデンシー

米国で内科、外科、小児科、救急科、精神科などの専門医になるために受ける卒後臨床研修をResidency(レジデンシー)と呼びます。日本の制度に置き換えると、「専攻医」と比較的近い位置づけです。

研修期間は診療科によって異なります。内科や小児科などは3年間、一般外科は5年間などが代表的で、より長期間の研修を必要とする診療科もあります。

レジデンシー修了後、各専門科で定められた条件を満たし専門医試験に合格することで、米国の専門医資格(Board Certification)取得へと進んでいきます。

レジデンシーに入るには?

日本の医学部卒業生が米国のレジデンシーに応募する場合、International Medical Graduate(IMG:米国外医学部卒業生)として応募します。

2027 Matchに向けた現在のECFMGの制度では、ECFMG Certificationの試験要件としてUSMLE Step 1とStep 2 CKへの合格が必要です。さらに、臨床能力・コミュニケーション能力に関するPathwayの要件を満たす必要があります。

そのうえで各レジデンシープログラムへ応募し、
書類選考 → 面接 → Rank Order List(希望順位表)の提出 → The Match
というプロセスを経て、研修先が決定します。

このマッチングシステムはNational Resident Matching Program(NRMP)によって運営されており、応募者と病院側がそれぞれ提出した希望順位をアルゴリズムによって組み合わせ、最終的な研修先を決定します。

つまりレジデンシー留学は、「留学先の先生に直接お願いして採用してもらう」というよりも、全米共通の採用プロセスに参加し、研修医として正式に採用されるという点が大きな特徴です。

臨床留学② フェローシップ

レジデンシー修了後、さらに専門性の高い領域についてトレーニングする制度をFellowship(フェローシップ)と呼びます。

たとえば内科レジデンシーを修了した後に循環器内科や消化器内科へ進んだり、救急科のレジデンシー修了後にEMS、集中治療、超音波などを専門的に学んだりする、といった形です。

日本の専門研修を「2階建て」で考えると、レジデンシーが1階部分、フェローシップがその上の2階部分と考えると分かりやすいでしょう。

日本で専門医を取得してから直接フェローになることもある

米国の一般的なキャリアでは、医学部 → Residency → Fellowshipという順番で進みます。

そのため、多くのACGME認定フェローシップでは、米国などの所定のレジデンシープログラムを修了していることが応募条件となっています。

一方で、一部の分野ではExceptionally Qualified International Graduateなどの例外規定が設けられており、米国外で十分な専門研修を受けた医師が米国レジデンシーを経ずにフェローシップへ進める場合があります。そのため、日本で専門研修 → 米国のClinical Fellowshipという形で渡米するケースも存在します。

ただし、これはすべての診療科・フェローシップで可能なわけではなく、プログラムごとに応募資格を確認する必要があります。

フェローシップでもUSMLEは必要?

患者さんを実際に診療するClinical Fellowshipでは、ECFMG Certificationや州の医師免許・研修医免許などが必要となることが多く、その過程でUSMLEへの合格が必要になります。

ただし、どのStepまで必要か、どのような医師免許が必要かは、プログラム・ビザ・州によって異なります。

また、すべてのフェローシップが同じ採用方法を取るわけではありません。レジデンシーで利用されるMain Residency Matchに参加するのではなく、個別採用を行うプログラムもあれば、専門分野ごとのFellowship Matchを利用するプログラムもあります。

したがって、フェローシップを検討する場合は、それぞれのプログラムについて応募条件を個別に確認することが重要です。

研究留学

米国の大学や研究機関の研究室に所属し、臨床研究または基礎研究に従事する留学です。所属施設によって、次のようなさまざまな名称が使用されています。

  • Research Fellow
  • Research Trainee
  • Postdoctoral Fellow
  • Visiting Researcher
  • Research Scholar

医学部卒業後にそのまま研究留学する人もいれば、日本で臨床研修を行った後に渡米する人、大学院で博士号を取得した後にPostdoctoral Fellow(ポスドク)として渡米する人もいます。

研究留学には決まったルートがない

レジデンシーのThe Matchのような全米共通の採用システムは、研究留学にはありません。

一般的には、研究室を主宰するPI(Principal Investigator)に連絡し、PIからポジションを得ることで留学が決定します。PIとは、研究費を獲得し、研究室や研究プロジェクトを率いる研究責任者のことです。

留学先を見つける方法もさまざまで、次のようなものがあります。

  • 日本の大学・医局から過去に留学していた研究室を紹介してもらう
  • 指導医や教授からPIを紹介してもらう
  • 国際学会でネットワーキングする
  • 興味のある論文の著者へ直接連絡する
  • 大学・研究機関の公募ポジションへ応募する

給与が支給されるポジションもあれば、所属元から給与を受け取り米国側では無給で研究するケースもあり、任期や待遇についても研究室によってさまざまです。

USMLEは必要?

研究留学では、基本的に患者さんの診療を行わないため、USMLEは必要ありません。そのため、「将来アメリカで研究してみたい」という場合には、必ずしもUSMLEから始める必要はありません。

一方、研究留学を足がかりとして将来的に米国レジデンシーへの応募を考えている場合には、研究と並行してUSMLEを受験する人もいます。

学位取得(Ph.D.・MPH・MBAなど)

もう一つの選択肢が、米国の大学院へ進学して学位を取得する方法です。医師に関連する代表的な学位として、次のようなものがあります。

  • Ph.D.(Doctor of Philosophy):研究者として専門的な研究を行う博士課程
  • MPH(Master of Public Health):公衆衛生学修士
  • MBA(Master of Business Administration):経営学修士
  • M.S.(Master of Science):各分野の理学修士

研究留学との大きな違いは、大学院の「学生」として正式に入学し、一定のカリキュラムを修了して学位を取得することを目的としている点です。

どのように応募する?

大学・プログラムによって異なりますが、一般的には、次のような書類・選考を通じて入学選考が行われます。

  • 大学の成績証明書
  • CV・Resume(履歴書)
  • Statement of Purpose(志望理由書)
  • 推薦状
  • TOEFLなどの英語能力試験
  • 面接

必要書類や英語試験の基準は大学院によって異なるため、それぞれのAdmission Requirementsを確認する必要があります。

学費や給与は?

MPHやMBAなどの修士課程では高額な学費が必要となることが珍しくありません。

一方、米国の生命科学系Ph.D.プログラムでは、授業料の免除に加えて、大学や研究室からStipend(生活費に相当する給与・給付金)を受け取りながら研究する形式も広くみられます。

ただし、Fundingの仕組みは大学・プログラムによって大きく異なるため、応募前の確認が必要です。

卒業後は、大学や研究機関で研究を継続したり、企業、行政、公衆衛生、医療政策など、それぞれの学位を活かしたキャリアへ進むケースがあります。

それぞれの米国留学の違い

ここまでの内容を簡単に整理すると、以下のようになります。

留学方法 主な目的 患者の診療 USMLE 主な応募方法
Residency 米国で専門医研修を受ける あり 必要 プログラム応募+The Match
Clinical Fellowship より専門的な臨床研修 あり 原則必要※ 個別応募/Fellowship Matchなど
Research Fellowship 基礎・臨床研究 原則なし 不要 PIへの応募・紹介・公募など
Ph.D. 研究+博士号取得 原則なし 不要 大学院入試
MPH・MBAなど 公衆衛生・経営などの学位取得 原則なし 不要 大学院入試

※必要となるUSMLE Step、ECFMG Certification、医師免許などの条件は、フェローシップの種類・州・ビザ・プログラムによって異なります。

このように、「米国留学」といっても、その目的によって必要な準備は大きく異なります。特に重要なのは、「アメリカに行きたい」から進路を考えるのではなく、「アメリカで何をしたいのか」から逆算することです。

米国で専門医になりたいのであればレジデンシー、すでに専門医としてのキャリアがあり特定領域を学びたいのであればフェローシップ、研究を深めたいのであれば研究留学やPh.D.、公衆衛生や医療政策を学びたいのであればMPHと、目的によって進むべきルートは変わります。

まとめ

医師・医学生が米国で学ぶ方法は、大きく「臨床留学」「研究留学」「学位取得」の3種類に分けられます。

なかでも患者さんの診療を伴うレジデンシーやClinical Fellowshipでは、USMLEやECFMG Certificationなど、米国で医師として働くための資格が重要になります。一方、研究留学やPh.D.、MPHなどでは基本的にUSMLEは必要ありません。

それぞれ応募方法も大きく異なり、レジデンシーにはThe Matchという全国規模の仕組みがある一方、研究留学ではPIとのネットワーキングが重要になるなど、準備すべきことも変わります。

「米国留学に興味があるけれど、まず何から始めればよいのかわからない」という方は、まず自分が米国で「臨床」「研究」「学位取得」のどれをしたいのかを整理してみると、必要な準備が見えてくるでしょう。

 
著者プロフィール

米国医師, CES講師:T先生

T先生は、東京大学医学部を卒業し、現在は米国で勤務医をされています。

日本の医師免許に加え、アメリカの医師免許も保持されています。CES医師国試予備校のUSMLEコース講師。USMLE のStep 1対策からレジデンシーマッチング対策まで、幅広く担当されています。

その指導は、丁寧でわかりやすく生徒から高い評価を得ています。