【特徴的・新傾向の問題解説】第119回医師国家試験〜119A67

 

問題

No,119A67

 

10か月の男児。嘔吐と血便を主訴に救急車で搬入された。

昨日の正午から嘔吐を認め、本日の午後4時から胆汁性嘔吐になった。

次第に元気がなくなり、血便も出現したため午後6時に母親が救急車を要請した。

意識は混濁し、痛み刺激で開眼する。

体温38.7℃。心拍数192/分、整。

血圧60/40mmHg。

呼吸数44/分。

SpO2 96%(room air)。

皮膚ツルゴールの低下と口唇の乾燥を認める。

心音と呼吸音とに異常を認めない。

腹部は軽度膨隆し、全体に硬く、打診で鼓音を認める。

血液所見:赤血球468万、Hb12.9g/dL、Ht40%、白血球20300、血小板15万。CRP8.3mg/dL。

腹部エックス線写真と腹部超音波像とを別に示す。

 

適切な治療はどれか。

 

 

【解答】e

解説

画像の膨張した腸管、target signから腸重積の診断は容易につけられるだろう。
問題は治療であるが、バイタルに問題なく、腸管穿孔を疑う所見がなければ高圧浣腸、あれば緊急手術が第一選択となる。
今回の患児はショック状態・腹部板状硬とバイタルが不安定かつ腸管穿孔所見もあるため、eが解答となる。

a 経過観察
腸管穿孔している恐れがあり、このまま経過観察していては患児が命を落としかねない。ほとんど禁忌であろう。
b 抗菌薬投与
腸管穿孔している場合は術前管理として腸内細菌をターゲットとした抗菌薬投与をするが、抗菌薬投与だけで治療できる訳ではなく、根本的治療は手術しかない。
c 高圧浣腸
腸管穿孔やショックバイタルでなければこちらが第一選択だが今回は適応外であろう。
d イレウス管留置
穿孔の無い腸重積だけなら治療できる可能性はあるが、穿孔が疑われる症例に対して施行しても敗血症などは防ぐことができない。
e 緊急手術
上記の解説通り、正解。

 

著者プロフィール

CES医師国試予備校 講師【M先生】

市中病院で臨床経験を積みながら、医師国家試験対策の指導に携わる。わかりやすく丁寧な解説に定評があり、授業内容だけでなく、学習計画や勉強方法についても生徒一人ひとりに合わせた指導を行う。基礎から応用まで、理解を深めるための的確なアドバイスを提供します。