【特徴的・新傾向の問題解説】第119回医師国家試験〜119D44

 

問題

No,119D44

 

73歳の女性。

発熱を主訴に来院した。

自宅近くの医療機関で甲状腺機能亢進症と診断され、1か月前から抗甲状腺薬を服用していた。

5日前から37℃台の発熱と感冒様症状が出現し、2日前から39℃台の発熱が継続するため受診した。

意識は清明。

体温39.2℃脈拍84/分、整。

血圧108/62mHg。

呼吸数23/分。

SpO2 94%(room air)。

眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。

咽頭に軽度の発赤を認める。

甲状腺腫と頚部リンパ節とを蝕知しない。

心音と呼吸音とに異常を認めない。

腹部は平坦・軟で、肝・脾を触知しない。

血液所見:赤血球370万、Hb11.1g/dL、Ht32%、白血球1200(分葉核好中球1%、好酸球0%、好塩基球0%、単球21%、リンパ球78%)、血小板26万。

血液生化学所見:AST32U/L、ALT26U/L、LD147U/L(基準124〜222)、γ-GT37U/L(基準9〜32)、尿素窒素10mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、TSH0.2μU/mL以下(基準0.2〜0.4)、FT3 4.2pg/mL(基準2.3〜4.3)、FT4 1.9ng/dL(基準0.8〜2.2)。CRP27mg/dL。

 

まず行うべき処置はどれか。

 

a 顆粒球輸血
b 抗菌薬の投与
c 抗真菌薬の投与
d 抗甲状腺薬の継続
e 抗ウイルス薬の投与

 

【解答】b

解説

ストーリーとしては抗甲状腺薬の服用副作用の無顆粒球症重症細菌感染だと考えられる。過去問では108D42などが近い問題となっている。

その際には「抗菌薬の投与と共に」行うのはどれか、と記載されており、過去問をしっかり勉強しておけば容易な問題であろうが、そうでなければ難問と化すだろう。国試における過去問研究の重要性を指摘するような問題である。

 

a:顆粒球を輸血することは多くなく、顆粒球、主に好中球を増やしたい場合はG-CSF投与を行う。
b:本症例は「発熱性好中球減少(FN)」の一例である。FNは「好中球が500以下、あるいは1000以下で500以下への減少が予想される場合で、38.3℃以上あるいは38℃以上の発熱が1時間以上続くとき」と定義されている。FNに対する対応としては、腸内細菌や緑膿菌を想定し高域抗菌薬を投与する。入院治療ではセフェピムまたはピペラシリン/タゾバクタムまたはメロぺネムなどが使用される。
c:当然、細菌による感染でない可能性もあるため、投与することもあるが、好中球減少であれば事前確率的には細菌感染症の可能性が高いため、「まず行う」処置ではない。基本的には抗菌薬投与後4-7日経って効果がない時に抗真菌薬を投与開始する。
d:抗甲状腺薬にてFNになっていると考えられるので、継続するのはFNを増悪させる。禁忌に近いと思われる。
e:FNの原因微生物としてウイルスが関わっていることは稀である。

 


 

著者プロフィール

CES医師国試予備校 講師【M先生】

市中病院で臨床経験を積みながら、医師国家試験対策の指導に携わる。わかりやすく丁寧な解説に定評があり、授業内容だけでなく、学習計画や勉強方法についても生徒一人ひとりに合わせた指導を行う。基礎から応用まで、理解を深めるための的確なアドバイスを提供します。