医師国家試験過去問の“テーマ別”活用術

――年度別ではなく、病態ごとに演習するメリットと勉強法

医師国家試験の対策といえば、「最新年度から年度別に順番に解く」という方法をまず思い浮かべる人が多いと思います。年度別演習では網羅的に全範囲演習できるメリットがあります。しかし、国試の出題傾向を考慮すると、普段の演習時においては過去問は“テーマ別”に整理して解くほうが圧倒的に理解が早まることがあります。

国試は400問ある総合試験ですが、その構造は決してランダムではありません。
むしろ 「科目ごとに出題が再構成され、毎年似た病態・疾患が変形して繰り返し出題される」という特徴があります。
だからこそ、年度順にただ周回するよりも、テーマ別に過去問をまとめて演習することで、疾患病態の理解や診断、治療の流れの把握、ひいては得点力の向上に繋がります。

この記事では、
① テーマ別で解くメリット
② テーマの切り方
③ 具体的な勉強手順
④ 年度別との使い分け
を、国試合格に直結する視点でまとめます。

■ 1. テーマ別に過去問を解くメリット

病態理解が“体系化”される(点ではなく線で覚えられる)

年度別に過去問を解くと、
心不全 → 肺炎 → DKA → 肝細胞癌 → COPD → 脳梗塞…
と、全く関連のない疾患が順番に出てきます。

そのため、同じ心不全でも
・ある年では急性左心不全の診断・ある年では慢性心不全の治療・ある年では心エコー所見・ある年では禁忌薬
というように情報がバラバラに現れ、知識が分断されやすいという欠点があります。

しかし、心不全だけを20〜30問まとめて解くと、

  • 病態
  • 検査(BNP・エコー)
  • 治療(急性・慢性)
  • 鑑別
  • 合併症
  • 禁忌薬
    まで一気に“線”としてつながり、理解が飛躍的に深まります。

知識が体系化がテーマ別学習の最大のメリットです。

忘れにくくなる(知識がネットワーク化する)

学習心理学でも、「関連分野を近接して学ぶと記憶定着が強固になる」
ことが示されています。

国試でも同様で、
肺炎 → COPD → 喘息
心不全 → 不整脈
甲状腺疾患(バセドウ → 橋本)
などをまとめて解くほうが、脳内で関連づけが自動的に起きて記憶が強く残るようになります。

年度別演習で知識が点在するより、病態ごとにまとめて処理するほうがその後の演習でも忘れにくいのです。

初見問題でも「病態」で解けるようになる(応用力が上がる)

国試で本当に点差がつくのは、「形式が変わっているように見える(=変形されている)典型問題に対応できるかどうか」です。

テーマ別で学ぶと
「疾患病態そのもの」が学習できるため、

  • 設問の形
  • 図表の形式
  • 選択肢の切り方

が変わっても、“病態から逆算して解ける”ようになります。

■ 2. テーマ別で整理する際の「テーマの切り方」

テーマを細かくしすぎると効率が落ちるため、
国試に出る“病態単位”でまとめるのがコツです。主には国家試験の学習教材ごとの区分で必要十分であることが多いです。教材通り、もしくは自分なりの区分ができたのちに分野別の学習を開始しましょう。

■ 3. テーマ別過去問の実践手順(5ステップ)

STEP1:QBや過去問をテーマごとに分類する

QB(クエスチョンバンク)はもともと疾患別に区切られているため、
テーマ別演習が最も簡単にできる教材です。初学の際はQBの区分に沿って、慣れてきた頃には自分の苦手分野、苦手な概念に沿って演習を行いましょう。

STEP2:1テーマをまとめて 20〜40問 連続で解く

テーマ別学習の最重要ポイントは
「知識が薄れる前に連続で解く」ことです。

  • 今日は“心不全”を25問
  • 明日は“肺炎”を30問

というように、「分野別に網羅的に解く」ことで、疾患病態から検査所見、治療までの流れが抑えられます。

STEP3:間違えた問題は“誤答理由”で仕分けする

誤答理由は次の3つに分類します:

  1. 知らなかった(知識穴)
  2. 知っていたが選択肢処理で負けた
  3. 読解・推論ミス(初見形式に弱い)

テーマ別だと弱点の傾向が非常に見えやすいです。弱点が把握できたら、誤答理由別に復習を正確に行いましょう。

STEP4:必要に応じてテキストや講義に戻って補強する

例えば心不全で

  • 利尿薬の禁忌
  • β遮断薬を使うタイミング
  • 心エコー評価

に不明点があれば、その日のうちに復習すると知識が“根”になります。なるべく国試直前までに「知識の穴」を埋めるようにしましょう。それがテーマ別演習のメリットです。

 

■ 4. 年度別演習との使い分け

テーマ別が万能というわけではありません。
最も伸びるのは、時期によってテーマ別と年度別を使い分けることです。

 

  • 6年生(6〜10月):テーマ別が最も効果的

知識を体系化する・弱点を洗い出すにはテーマ別が最適。

 

  • 追い込み期(11〜12月):年度別で“総合力”を仕上げる

国試本番は複数領域が混在するため、
追い込み期は年度別で“総合演習”を行うと完成度が上がります。

  • 直前期(1〜2月):弱点によって年度別、テーマ別に使い分ける

直前期は模擬試験等の苦手分野の偏在によって年度別の継続、もしくはテーマ別演習の使いわけを行いましょう。国試は「苦手分野を埋めること」が鍵ですので、苦手分野は再度テーマ別演習を行いましょう。

 

 

■ 5. まとめ:過去問は“テーマ別”が最強の基礎固め

テーマ別過去問を導入すると、
「国試の問題の構造が一気に見えるようになる」 という大きな変化が起きます。

国試は病態ごとの出題が繰り返されるため、テーマ別演習が最短で理解を深める

テーマ別で解くと知識がリンクし、忘れにくく、応用力が高まる

テーマの切り方は「病態別」「主要疾患別」が最も効率的

✔ 6〜12月はテーマ別 → 追い込み期に年度別 → 直前期は目的によって使い分け

テーマ別学習で“病態がわかる医学生”になる

と、最初から年度別演習を行うよりもはるかに効率的な学習ができるので、ぜひ取り入れてみてください。

著者プロフィール

東大医学部卒講師(現役医師)

略歴:

PMD医学部専門予備校およびCES医師国家試験予備校で講師として指導中。
医学教育・国試対策に関する豊富な実務経験をもとに監修・執筆を担当。