第1回 医師国家試験予備試験とは何か

制度の全体像を分かりやすく解説

海外の医学部で学ぶ日本人学生やそのご家族の中には、「医師国家試験予備試験」という制度の名前を耳にしたことがある方も多いと思います。しかし実際には、制度の内容や受験資格、試験の流れについてまとまった情報は多くありません。インターネット上にも断片的な情報や古い情報が混在しており、制度の全体像を正確に理解することは容易ではないのが現状です。

本記事では、医師国家試験予備試験の位置づけや試験の構成、医師国家試験との違いについて、初めて触れる方にも分かりやすく整理します。海外医学部から日本で医師として働くことを考えている方にとって、最初に押さえておくべき基礎知識をまとめていきます。

医師国家試験予備試験とは

医師国家試験予備試験とは、日本の医学部を卒業していない人が、日本の医師国家試験の受験資格を得るために受ける試験です。

日本で医師免許を取得する一般的な流れは、以下の通りです。

  1. 日本の医学部を卒業
  2. 医師国家試験を受験
  3. 合格後、医師免許取得
  4. 初期臨床研修を開始

このルートは、日本の6年制の医学教育制度を前提としたものです。日本の医学部では6年間の教育課程の中で基礎医学と臨床医学を学び、臨床実習を経験した上で国家試験を受験します。

一方、海外の医学部を卒業した場合、その教育内容が日本の医学教育と同等であるかどうかを確認する必要があります。その確認手段の一つが、医師国家試験予備試験です。

この試験に合格すると、日本の医師国家試験の受験資格を得ることができます。つまり、予備試験は医師免許を取得するための最終試験ではなく、日本の医学部を卒業した学生と同等の学力を担保する役割を持ち、医師国家試験へ進むための前段階に位置づけられる試験です。

どのような人が対象になるのか

予備試験の対象となるのは、主に海外の医学部で教育を受けた方です。具体的には次のようなケースが考えられます。

  • 海外の医学部を卒業した日本人
  • 海外で医学教育を受けた外国人医師

ただし、海外医学部卒業者が必ず予備試験を受ける必要があるわけではありません。

海外医学部を卒業した場合、まず厚生労働省による受験資格の個別審査が行われます。この審査では、大学のカリキュラム、授業時間、臨床実習の内容などが確認されます。

その結果、教育内容が日本の医学部と同等と判断された場合には、医師国家試験の受験資格が直接認められることがあります。一方で、教育内容や修業年数に差があると判断された場合には、予備試験の受験が求められることがあります。

この判断は大学単位だけでなく、個人ごとに異なる可能性もあり、一律ではありません。

この骨格は共通で、違うのは1日の設計と周回のスピードです。

予備試験の全体構成

医師国家試験予備試験は、一般的に次の三段階で構成されています。

  1. 一部試験(基礎医学中心の筆記試験)
  2. 二部試験(臨床医学中心の筆記試験)
  3. 二部試験実地試験(臨床能力評価)

基礎医学から臨床医学、さらに実際の診療能力までを段階的に評価する仕組みとなっています。

一部試験(基礎医学)

一部試験では、基礎医学分野の知識が問われます。日本の医学部の基礎医学教育に相当する9科目が出題対象となります。

主な分野は以下の通りです。

  • 解剖学
  • 生理学
  • 生化学
  • 病理学
  • 免疫学
  • 薬理学
  • 微生物学
  • 公衆衛生学
  • 法医学

これらは臨床医学の基盤となる重要な領域です。問題は日本語で出題され、各科目10問ずつ、計90問が出題されます。そのため、海外医学部で英語中心に学んできた場合、日本語で医学を理解し直すこと自体が一つのハードルになることもあります。この一部試験は予備試験最大の難所と言われています。

二部試験(臨床医学)

一部試験に合格すると、二部試験に進みます。

ここでは臨床医学の知識が中心となり、以下の12科目が対象となります。

  • 内科
  • 外科
  • 小児科
  • 産婦人科
  • 整形外科
  • 泌尿器科
  • 放射線科
  • 眼科
  • 耳鼻咽喉科
  • 精神科
  • 皮膚科
  • 救急医学

症例ベースの問題や臨床推論を問う内容が出題され、日本の医学部で臨床実習を経験した学生と同等の理解が求められます。各科目10問ずつ(内科のみ20問)、計130問が出題されます。

実地試験(臨床能力の評価)

筆記試験を通過すると、最終段階として実地試験が行われます。

ここでは、医師としての基本的な臨床能力が評価されます。主な評価項目としては、

  • 問診
  • 身体診察
  • 臨床推論
  • 医療面接

などが挙げられます。

試験の詳細については公開情報が限られていますが、日本の医学教育で求められるOSCEを基盤とした基本的な診療能力を確認する目的で実施されていると考えられます。

また、実地試験は内科、外科、産婦人科、小児科、救急医学の5科目から構成され、各科目3点ずつ、計15点満点で評価されます。

医師国家試験との違い

医師国家試験予備試験と医師国家試験は、役割が明確に異なります。

予備試験は「医師国家試験を受験する資格を有しているか」を確認する試験です。一方、医師国家試験は「医師として必要な知識・能力を備えているか」を判断する最終試験です。

したがって、予備試験に合格しただけでは医師免許は取得できません。合格後に1年以上の実地修練を行った上で、医師国家試験に合格する必要があります。

制度を理解することの重要性

海外医学部から日本で医師として働くことを考える場合、この制度を早い段階で理解しておくことは非常に重要です。

理由としては、

・進むべきルートが複数存在すること
・準備に長期間を要する可能性があること
・情報が限られていること

が挙げられます。

特に、どのルートに該当するのかは個別審査によって異なるため、自分の状況を早めに把握することが重要になります。

FAQ

Q1:海外の医学部を卒業すれば必ず予備試験を受ける必要がありますか?
必ずしもそうとは限りません。海外医学部の教育内容、修業年数によっては、個別審査の結果、医師国家試験の受験資格が直接認められる場合もあります。
Q2:予備試験は毎年実施されていますか?
基本的には毎年実施されています。ただし、日程や試験形式は年度によって変更される可能性があります。
Q3:合格率はどのくらいですか?
年度によって変動します。受験者数自体が多くないため、単純な合格率だけで難易度を判断するのは難しい面もあります。
Q4:一度にすべての試験を突破しなければならないのですか?
いいえ。途中で不合格となった場合でも、次年度は合格した試験区分(一部試験など)が免除されます。
Q5:予備試験に合格すれば医師免許がもらえますか?
いいえ。予備試験は医師国家試験の受験資格を得るための試験です。合格後、1年以上の実地修練を行った後、医師国家試験に合格する必要があります。
Q6:日本語能力はどの程度必要ですか?
試験は日本語で実施されるため、医学的内容を理解できる日本語能力が必要になります。
Q7:勉強はどのくらい前から始めるべきですか?
個人のバックグラウンドによって異なりますが、基礎医学から臨床医学まで広い範囲を復習する必要があるため、最低でも半年以上前から十分な準備期間を確保することが望ましいと考えられます。
Q8:日本の医学生と同じ教材で勉強する必要がありますか?
必ずしも同じ教材である必要はありませんが、日本の医学教育に準じた内容を学習することが重要とされています。
Q9:予備試験の情報はどこで確認できますか?
基本的な制度や受験資格については、厚生労働省の公式情報で確認することができます。最新の情報は公式発表を確認することが重要です。

まとめ

医師国家試験予備試験は、海外医学部卒業者が日本で医師になるための重要なルートの一つです。ただし、その位置づけや受験条件は一律ではなく、個々の状況によって大きく異なります。まずは制度の全体像を正しく理解することが、適切な進路選択への第一歩になります。

次回は、「海外医学部卒業生にとっての壁とは何か」というテーマを取り上げます。制度面だけでなく、日本語での学習や情報収集、進路選択といった実際の課題に焦点を当て、より現実的な視点から解説していきます。

著者プロフィール

CES医師国試予備校 講師【K先生】

フィリピンの医学部を卒業後、日本での医師資格取得を目指して医師国家試験予備試験を受験。海外医学部出身者の立場から、試験制度や勉強方法、進路選択に関する情報を発信しています。