2025年度日本医師国家試験予備試験の概要、日程、内容、レベルについて
はじめに
日本で医師として医療行為を行うためには、医師免許を取得する必要があります。日本の医学部を卒業した者は、卒業後に医師国家試験を受験する資格を得られますが、日本医師免許受験資格のない海外の医学校を卒業した者や、その他の特定の条件を満たす者は、まず日本医師国家試験予備試験(以下、予備試験)に合格する必要があります 。
この予備試験は、これらの条件を満たさない者が日本の医師国家試験を受験するための最初の重要なステップとなります 。予備試験に合格した後、受験者はさらに1年以上の診療および公衆衛生に関する実地修練を経ることで、ようやく医師国家試験の受験資格を得ることができます 。
近年、海外の医学部を卒業した者に対する受験資格の認定基準が見直され、厳格化される傾向にあります 。これは、実地試験や日本語診療能力調査の難易度が上昇していることからも窺えます 。日本の医療制度が一定の質を維持しようとする姿勢の表れであり、予備試験は単なる形式的な試験ではなく、日本で医師として働くための能力をしっかりと評価する重要な関門となっていると言えるでしょう。
将来的には、日本の医学部生と同様の評価方法である共通試験CBT(Computer Based Testing)やPre-CC OSCE(Pre-Clinical Clerkship Objective Structured Clinical Examination)が、予備試験の代替として導入される可能性も示唆されています 。これは、海外の医学部卒業生に対する評価を、国内の医学教育を受けた学生と同等の基準で行うことを目指す動きと考えられます。
最新の試験日程と出願期間
予備試験は、第一部試験(筆記試験)と第二部試験(筆記試験および実地試験)の二段階で構成されています。令和6年度(2024年度)の試験日程は以下の通りです 。
* 第一部試験(筆記試験): 令和6年6月17日(月曜日)、試験地は東京都 。
* 出願期間は令和6年5月7日(火曜日)から5月22日(水曜日)まででした 。
* 試験会場は受験者数によって毎年異なり、2024年はベルサール西新宿HALLでした 。
* 第二部試験: 試験地は東京都 。
* 筆記試験: 令和6年9月26日(木曜日) 。
* 出願期間は令和6年8月2日(金曜日)から8月22日(木曜日)まででした 。
* 2024年の試験会場は、当初厚生労働省12階専用15会議室とされていましたが、当日に変更があったとのことです 。
* 実地試験: 令和6年11月12日(火曜日)または13日(水曜日) 。
* 出願期間は第二部試験筆記試験と同様です 。
* 試験は受験番号順に5名ずつ呼ばれ、各科目6分の口頭試問形式でローテーションして行われました 。
令和7年度(2025年度)の試験日程については、例年5月1日頃に厚生労働省から詳細が発表される予定です 。過去の試験日程 から推測すると、第一部試験は6月中旬、第二部筆記試験は9月下旬、第二部実地試験は11月中旬に東京都で実施される可能性が高いと考えられますが、正確な日程は必ず厚生労働省の公式発表をご確認ください。
予備試験の受験申請は、厚生労働省医政局医事課試験免許室に対して行います 。申請には所定の書類を期限内に提出する必要があり、期限を過ぎた場合は原則として受け付けられません 。医師国家試験の受験手続きに必要な書類 は、予備試験の申請においても参考になる可能性があります。例えば、受験願書、写真付き身分証明書などが一般的に必要となります。令和5年度(2023年度)の予備試験の出願期間 を見ると、第一部試験と第二部試験で締め切りが異なっていたため、受験する試験区分に応じて締め切り日を正確に把握することが重要です。
予備試験は、段階的に実施される試験であり、各段階に定められた出願期間を逃すと、その年度の受験機会を失うことになります。令和6年度の試験地が全て東京都であったこと から、受験者は全ての試験段階において東京への移動と滞在を考慮する必要があると考えられます。
試験科目と試験範囲
予備試験は、基礎医学から臨床医学まで幅広い知識を評価する試験です。各試験段階における科目と範囲は以下の通りです 。
* 第一部試験(筆記試験):
* 試験科目:解剖学(組織学を含む)、生理学、生化学、免疫学、薬理学、病理学、法医学、微生物学(寄生虫学を含む)、衛生学(公衆衛生学を含む)。
* 試験形式:各科目10問、計90問の多肢選択式試験 。
* 合格基準:90点満点中6割以上(54点以上)の得点 。絶対評価方式が採用されています。
* 第二部試験:
* 筆記試験:
* 試験科目:内科学、小児科学、精神科学、外科学、整形外科学、産科・婦人科学、皮膚科学、泌尿器科学、耳鼻いんこう科学、眼科学、放射線科学、救急医学(麻酔科学を含む)。
* 試験形式:多肢選択式試験(科目ごとの出題数は不明)。
* 合格基準:総得点で6割以上の得点 。絶対評価方式です。
* 実地試験:
* 試験科目:内科学、外科学、産科・婦人科学、小児科学、救急医学(麻酔科学を含む)。
* 試験形式:各科目における口頭試問 。各科目3点満点の合計15点満点で評価されます。
* 合格基準:合計10点以上の得点が必要です。ただし、いずれかの科目で0点を取った場合は、総合得点が10点以上でも不合格となります 。各科目ごとに個別に評価が行われます。
第一部試験は、医学の基礎となる幅広い知識を問う内容であり、これに合格しなければ第二部試験の筆記試験を受けることはできません 。第二部試験は、臨床医学の各分野における知識と、それを応用する能力が評価されます。特に実地試験では、口頭での質疑応答を通じて、受験者の臨床的な思考力やコミュニケーション能力が試されると考えられます。
予備試験形式の詳細
予備試験の各段階における試験形式の詳細について解説します。
* 第一部試験(筆記試験):
* 形式:紙媒体による多肢選択式試験です 。
* 問題数:90問(各科目10問)。
* 試験時間:令和6年度の試験時間は、午前が10時20分から12時00分、午後が1時10分から2時30分で、合計2時間40分でした 。
* 持ち物:受験票、写真付き身分証明書(パスポート、運転免許証など)、鉛筆、黒のボールペン、鉛筆削り、プラスチック消しゴム、腕時計、昼食などが必要です 。
* 第二部試験(筆記試験):
* 形式:紙媒体による多肢選択式試験です 。
* 問題数:不明ですが、11の臨床科目をカバーするため、相当数の問題が出題されると考えられます。令和6年度の試験時間は、午前が10時00分から12時20分、午後が1時20分から3時20分で、合計4時間20分でした 。
* 持ち物:第一部試験と同様です 。
* 第二部試験(実地試験):
* 形式:口頭試問 。
* 構成:受験番号順に5名程度のグループで呼ばれ、内科学、外科学、産科・婦人科学、小児科学、救急医学(麻酔科学を含む)の5科目を順にローテーションして受験します 。各科目の試験時間は約6分で、合計約30分の試験時間となります 。受験者全員が終了するまで解散とはなりません 。
* 雰囲気:令和6年度の試験当日の雰囲気は、非常に緊張感が高く、「お通夜」のようだったと報告されています 。ほぼ全員がスーツ姿で、私服の受験者は浮いていたとのことです 。試験室の仕切りが薄いため、隣の受験者の声が聞こえることもあったようです 。
実地試験は、単に知識を問われるだけでなく、その知識をどのように臨床的な状況で応用できるか、そしてそれを口頭で的確に伝えられるかが評価されると考えられます。試験官との直接的なやり取りを通じて、受験者の総合的な臨床能力が判断される重要な試験です。
合格基準点と合格率
予備試験の合格基準点は、各試験段階で絶対評価方式が採用されています 。
* 第一部試験(筆記試験): 90点満点中54点以上 。
* 第二部試験(筆記試験): 総得点で6割以上 。
* 第二部試験(実地試験): 15点満点中10点以上。ただし、いずれかの科目で0点を取った場合は不合格となります 。
予備試験自体の合格率に関する公式な統計データは、提供された情報からは明確には確認できませんでした。しかし、医師国家試験全体における予備試験合格者からの合格率に関する情報 から、予備試験の難易度を推測することができます。
令和7年(2025年)の医師国家試験において、予備試験を経由して受験した者の合格率は全体で69.7%であり、新卒に限ると78.3%、既卒では50.0%でした 。これは、認定区分(主に日本の医学部卒業生)の合格率と比較すると、全体的にやや低い傾向にあります。過去13年間のデータ を見ると、認定と予備試験の両方からの合格率の平均は48.4%と、一般の合格率よりも大幅に低いことが示されています。これらのデータは、予備試験を突破して医師国家試験に臨む道のりが、決して容易ではないことを示唆しています。
司法試験の予備試験 の合格率が非常に低い(3.6%)という情報もありますが、これは医師国家試験予備試験とは異なる試験です。医師国家試験全体の合格率は90%を超えることが多い ものの、予備試験を経由する受験者の合格率が低い傾向にあることは、予備試験自体が一定の難易度を持つことを示唆しています。
予備試験の合格基準
| 試験段階 | 合格基準 | 評価方式 |
| 第一部試験(筆記) | 90点満点中54点以上 | 絶対評価 |
| 第二部試験(筆記) | 総得点で6割以上 | 絶対評価 |
| 第二部試験(実地) | 15点満点中10点以上、かつ全科目で0点でないこと | 絶対評価(科目ごと及び総合) |
試験の難易度について
予備試験の難易度については、複数の情報源から考察することができます。ある予備校の情報 では、予備試験は「能力試験」とされ、内部の模試では正答率80%を想定しているものの、60%を下回ると不合格ラインとされています。これは、広範な知識だけでなく、それを応用する能力が求められることを示唆しています。
一方、ある情報 では、予備試験の筆記試験は、医師国家試験本番のような長文の臨床問題はほとんど出題されず、各科目で単純な知識を問われる問題が中心であるとされています。この点は、予備試験の筆記試験においては、基本的な医学知識を網羅的に理解していることが重要であることを示唆しています。しかし、実地試験については難易度が上昇しているという指摘 もあり、臨床的な思考力や日本語でのコミュニケーション能力がより厳しく評価される傾向にあると考えられます。
過去の受験者の体験談 では、第一部試験対策として、法医学や公衆衛生といった比較的範囲が狭く、得点しやすい科目を優先的に学習することが推奨されています。また、第二部試験の筆記試験は、医師国家試験の短文の問題に類似しているという意見もあります。
海外の医学部を卒業した者が日本の医師免許を取得するまでの道のり においても、予備試験が「難しい予備試験」と表現されており、書類準備の複雑さに加えて、基礎医学を含む筆記試験と実技試験の両方に合格する必要があることが強調されています。
これらの情報を総合すると、予備試験は、広範な医学知識を基礎から臨床まで網羅的に理解している必要があり、特に実地試験においては、臨床的な思考力と日本語でのコミュニケーション能力が重要となる、決して容易ではない試験であると言えるでしょう。
過去問と参考書
予備試験対策として活用できる過去問や参考書に関する情報はサイト上でいくつか見られます。あるウェブサイト では、予備試験の過去問と解説が提供されており、受験対策として非常に有用であると考えられます。また、Amazonなどのオンラインストア でも、過去の予備試験問題集が販売されていることがあります(ただし、古い年度のものもあるため注意が必要です)。Premed.info というサイトでは、14年分の過去問とその解説がオンラインで閲覧可能であり、PDF形式でのダウンロードも提供されているようです。
日本の予備校(Medu4、MEC、TECOMなど)のテキストは、質が高く、試験に必要な内容を網羅的にカバーしているため、高価ではあるものの利用価値が高いという意見 もあります。
医師国家試験の過去問や参考書 も、予備試験対策として参考になる可能性があります。特に第二部試験の筆記試験は、医師国家試験の短文問題に類似しているという意見 もあるため、これらの教材を活用することで、試験のレベル感や出題傾向を把握することができるかもしれません。
厚生労働省の公式情報
予備試験に関する最も正確で最新の情報は、厚生労働省のウェブサイトで確認することが不可欠です。厚生労働省の資格・試験情報のページ には、医師国家試験および予備試験に関する詳細な情報が掲載されています。特に、令和6年度医師国家試験予備試験の施行に関するページ では、試験期日、試験地、試験科目、受験資格、受験手続など、重要な情報が網羅されています。医師国家試験に関するページ にも、予備試験を経由した受験に関する情報が含まれています。
厚生労働省は、例年5月1日頃に翌年度の予備試験の詳細を発表する ため、受験を検討している場合は、この時期に必ず公式サイトを確認するようにしてください。また、予備試験に関する問い合わせ先 も公開されているため、不明な点があれば直接問い合わせることも可能です。令和6年度の試験日程 も厚生労働省のウェブサイトに掲載されています。
厚生労働省のウェブサイトは、試験日程、出願期間、試験科目、試験形式、合格発表など、受験に必要な全ての情報を提供する唯一の信頼できる情報源です。必ず公式サイトで最新情報を確認し、誤った情報に惑わされないように注意してください。
まとめ
日本医師国家試験予備試験は、海外の医学部を卒業した者などが日本で医師免許を取得するための重要な第一歩です。試験は、基礎医学を問う第一部筆記試験、臨床医学を問う第二部筆記試験、そして臨床能力を評価する第二部実地試験の三段階で構成されています。各試験には合格基準が設定されており、特に実地試験は口頭試問形式で、より実践的な能力が評価されます。
試験の難易度は決して低くありませんが、過去問や予備校の教材などを活用して十分に準備することで合格を目指すことは可能です。最も重要なのは、厚生労働省の公式ウェブサイトで最新の試験日程や内容、出願手続きなどを確認し、正確な情報に基づいて対策を進めることです。
予備試験に合格し、その後の実地修練を修了することで、日本の医師国家試験を受験する資格が得られます。日本で医師として活躍したいという強い意志を持つ方は、しっかりと準備を行い、この難関を突破してください。