【2025年】第119回医師国家試験総評|難易度・必修・一般・臨床を解説

総評 (2025年2月15日記載)

はじめに

厚生労働省 | 医師国家試験の施行について

 

【総合】

第119回医師国家試験全体の難易度としては、昨年度118回に比べると難化した印象である。

117回と同等かそれ以上の難易度だったと思われる。そのため、ここ最近合格最低点は上昇し続けているが、本年度は昨年度よりは下がるものと予想される。

 

【必修問題解説】

必修問題についてはやはり【例年通り】の難易度であった。

手技系の問題など実臨床・臨床実習に即した問題が一般問題、臨床問題より比較的多く出題されるのはここ数年のトレンドであるといえる。

教科書的な勉強のみでも必修問題の合格を取るのは可能であろうが、実習に積極的に取り組んできた学生の方が有利な側面はあるといえる。

 

【一般問題解説】

一般問題では基礎医学的な内容、マイナー疾患についての細かい知識が問われている問題が増加し、少なくとも前年度よりは【難化】していると思われる。

公衆衛生分野も含めて、多くの受験生が初めて見るような新視点の問題も数多く出題されたが、そちらは少し考えれば解ける問題が多かった印象である。

臨床問題の項目でも述べるが、一般問題の難易度が上昇したことにより昨年度よりも難化した印象が強い。

 

【臨床問題解説】

臨床問題では、基礎的な問題が増えた昨年度118回に比べて少し考えさせるような問題が多く見られた。

1つの疾患のみが関わる病態ではなく、2つやそれ以上、薬剤なども関わってくるため、1つの病態について様々な事を考えさせる問題が多かったと思われる。

しかしながら昨年度より多少難化したものの、医師国家試験全体を通してみると117回などと同程度の難易度であり、【例年通り】といえる。

今後はこのレベルの問題が基準となっていくことが予想されるため、過去問の研究は勿論、1つ1つの疾患の詳しい理解が求められていくものと思われる。

 

必修問題解説

 

【内科・外科】例年通り

必修問題の内科・外科は例年通り有名疾患の教科書的な知識を問う問題が多く、例年から大きく変わった傾向の問題は少なかったといえる。

実際の実習を意識した問題が比較的多く出題されるもの例年通りだが、末梢ルートの確保(E28)の問題は実習で行った学生とそうでない学生とで差がつきやすい問題であった。

今後このような問題が増加してくると思われるため、病院実習を積極的に行うことがそのまま国試対策になるだろう。


 

【マイナー・産婦・小児】例年通り

統合失調症が必修3点問題で出題される(B49, 50)など昨年に続きマイナー科の対策も必須であるが、こちらも疾患についての基本的な知識や過去問を押さえていれば解ける問題が多い。

マイナー科は実習に関する問題は少なく、過去の一般問題が必修問題に形を変えて出題されることがよくあるため、過去問の研究が重要といえる。


 

【公衆衛生】例年通り

公衆衛生分野も出題傾向は例年と変わらない。

過去問と同様の教科書的知識を問う問題と、その場で考えさせる新傾向の問題がおよそ半分ずつの割合で出題されている。

新傾向といっても、従来の問題の角度を変えた様な問題が大半であり、全く見たことのない問題は出題されにくい。

とはいえ薬剤処方の問題(E24)など、今後実習に絡めた問題の出題を予感させる。

現時点では他の必修科目と変わらず、過去問の研究と教科書的な勉強をすれば合格点は取れる分野であった。

 

一般・臨床問題解説

 

【内科・外科】例年通り

やや易化であった昨年の同分野に比べると多少難化し、例年通りの難易度に落ち着いたという印象がある。

英語で「被殻」を答えさせる問題(A3)や、筋強直性ジストロフィーのFlow-Volume曲線(C40)、シルデナフィルを服用している右室梗塞に対する救急救命(F69-71)など、一部難易度の高い問題はあるが、大多数は各疾患を押さえておけば解ける問題が多かった。


 

【マイナー】例年通り

皮膚の機能について詳しく問う問題(F14)や精神科の用語を正しく理解していなければ解けない問題(F20)など、やはりこちらでも高難易度問題は散見されたが全体を通しての難易度は昨年度を含めて例年通りであった。

マイナーの高難易度問題は「見たことがない分野」ではなく、「覚えることが多く、受験生の多数が深くは勉強していない分野」が出題される傾向にある。

そのため高得点を狙うのでなければ、マイナーの対策は過去問をしっかりやりこんでおけば最低限は得点できるものと考えられる。


 

【産婦・小児】やや難化

クレチン症の診断(A36)、新生児の免疫動態(F30)、習慣性流産の鑑別(F37)など、教科書の端に書いてあることが問われる難易度の高い問題が散見された。

それ以外の問題が簡単という訳ではなく、過去問、教科書をしっかり勉強しておく必要のある問題が基本的に多い。

昨年度の総評にも記載したが、産婦・小児は新しい知識が問われる訳ではなく、しっかり勉強していない学生が得点しにくい問題が出される傾向にある。今後の受験生には早期からの対策を推奨する。


 

【公衆衛生】やや難化~例年通り

インフルエンザの出校停止期間を正確に理解しておかなければ解けない問題(C52)、小児のワクチン接種時期について正確に理解しておかなければ解けない問題(C53)と、こちらでも高難易度の問題は散見された。

公衆衛生の高難易度の方向性としては「教科書の主要な部分をしっかりと覚えているかどうか」であり、新傾向の問題はそこまで難しくない事が多い印象である。

過去に何度も出題されているWHO憲章(F25)の問題など、過去問の重要性も高いため、過去問をベースにして教科書的な知識を入れていけば国試対策としては勉強がスムーズに行くと思われる。

 


 

著者プロフィール

CES医師国試予備校 講師【M先生】

市中病院で臨床経験を積みながら、医師国家試験対策の指導に携わる。わかりやすく丁寧な解説に定評があり、授業内容だけでなく、学習計画や勉強方法についても生徒一人ひとりに合わせた指導を行う。基礎から応用まで、理解を深めるための的確なアドバイスを提供します。