【2027年版】日本の医療は本当に崩壊寸前?医療機関の休廃業・解散が過去最多となった理由を医師国家試験対策でわかりやすく解説
帝国データバンクの最新公表では、画像の記事が扱う「722件」は2024年の数値です。2025年は休廃業・解散823件、倒産66件となり、いずれも2年連続で過去最多を更新しました。記事ではこの最新情報まで反映しています。なお、件数は「施設数」ではなく「事業者数」です。([TDB][1])
CES医師国試予備校|医療制度・公衆衛生対策
日本の医療は崩壊寸前?医療機関の休廃業・解散が過去最多となる理由を医師国家試験対策として解説
「日本の医療は崩壊寸前なのではないか」「国民医療費が増えているのに、なぜ病院や診療所の経営は苦しいのか」と疑問に感じる人も多いでしょう。
帝国データバンクの調査によると、2024年に休廃業・解散した医療機関は722件となり、当時の過去最多を記録しました。さらに2025年には823件へ増加し、2年連続で過去最多を更新しています。
ただし、この数字だけを見て「日本中の病院が次々と倒産している」と理解するのは正確ではありません。休廃業・解散の多くは診療所であり、経営者の高齢化や後継者不足による閉院も含まれています。
一方で、物価、人件費、医療材料費、光熱費などの上昇に対し、公定価格である診療報酬を医療機関が自由に引き上げられないという構造的な問題もあります。
本記事では、医療機関の休廃業・解散が増えている背景を整理し、地域医療構想、医師偏在、診療報酬、医師の働き方改革など、医師国家試験で押さえておきたい制度上のポイントを解説します。
この記事の重要ポイント
・2024年の医療機関の休廃業・解散は722件、2025年は823件
・休廃業・解散と倒産は同じではない
・休廃業・解散の中心は病院ではなく診療所
・経営者の高齢化、後継者不足、物価高、人件費上昇が重なっている
・国試では地域医療構想、医療提供体制、医師偏在などと関連づけて理解する
1.医療機関の休廃業・解散722件が意味するもの
帝国データバンクによると、2024年に休廃業・解散が判明した医療機関は722件でした。内訳は、病院17件、診療所587件、歯科医院118件です。
| 医療機関の種類 | 2024年の休廃業・解散 | 構成上の特徴 |
|---|---|---|
| 病院 | 17件 | 全体に占める割合は小さい |
| 診療所 | 587件 | 全体の約8割を占める |
| 歯科医院 | 118件 | 診療所に次いで多い |
| 合計 | 722件 | 当時の過去最多 |
数字を読むときの注意
722件は医療施設の廃止届を単純に合計した施設数ではなく、帝国データバンクが把握した事業者数です。また、休廃業・解散には経営破綻だけでなく、経営者の高齢化や後継者不在などによる自主的な閉院も含まれます。
したがって、「722の病院が倒産した」と理解するのは誤りです。実際の倒産件数は、2024年には64件でした。
ただし、地域に一つしかない診療所が閉院すれば、その地域の住民にとっては大きな影響があります。件数だけでなく、診療科、地域、代替医療機関までの距離、交通手段などを含めて評価する必要があります。
2.最新データでは2025年に823件へ増加
画像の記事では2024年の722件が紹介されていますが、その後に公表された2025年の調査では、医療機関の休廃業・解散は823件、倒産は66件となりました。
いずれも2年連続で過去最多を更新しており、医療機関の退出が一時的な現象ではなく、継続的な課題になっていることが分かります。
| 年 | 倒産 | 休廃業・解散 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 64件 | 722件 | 786件 |
| 2025年 | 66件 | 823件 | 889件 |
さらに2026年上半期の倒産件数は39件となり、前年同期の35件を上回りました。このままのペースが続けば、年間倒産件数が2025年の66件を上回る可能性があります。
国試受験生が持つべき視点
「過去最多」という言葉だけを覚えるのではなく、どの種類の医療機関が減っているのか、なぜ減っているのか、地域住民にどのような影響を与えるのかまで考えることが重要です。
3.休廃業・解散と倒産は同じではない
医療機関の退出を理解するには、「倒産」と「休廃業・解散」を区別する必要があります。
| 区分 | 意味 | 主な背景 |
|---|---|---|
| 倒産 | 債務の支払いが困難になり、法的整理などに至ること | 収益悪化、過大な借入、患者減少、コスト上昇など |
| 休廃業 | 事業を休止または終了すること | 高齢、健康問題、後継者不在、採算悪化など |
| 解散 | 法人としての活動を終了する手続き | 事業承継困難、事業目的の終了、経営判断など |
診療所では、院長自身が経営者であることが多く、院長の高齢化や疾病によって診療を継続できなくなるケースがあります。赤字で破綻したわけではなくても、後継者が見つからなければ閉院に至ります。
したがって、休廃業・解散の増加には、医療経営の悪化と同時に、医師の高齢化や事業承継という人口構造上の問題も含まれています。
医療提供体制への影響は倒産かどうかだけでは決まらない
患者の立場から見れば、倒産であっても自主廃業であっても、利用していた医療機関がなくなる点は同じです。特に地方では、閉院によって通院距離が長くなり、高齢者や自動車を運転できない住民が受診しにくくなる可能性があります。
4.医療費が増えても医療機関が儲かるとは限らない
日本の国民医療費は、高齢化や医療技術の進歩などを背景に増加傾向にあります。しかし、国民医療費の増加と、個々の病院や診療所の利益増加は同じではありません。
国民医療費が増加
↓
高齢化・受診量・高度医療・薬剤費などが増加
↓
すべての医療機関の利益が増えるとは限らない
↓
人件費・材料費・光熱費・設備更新費なども上昇
一般企業であれば、原材料費や人件費が上がったときに販売価格を引き上げることができます。しかし、保険診療の価格は診療報酬によって全国一律に定められており、医療機関が独自に値上げすることはできません。
そのため、物価や賃金が急速に上昇しても、診療報酬の改定が十分に追いつかなければ、患者数や医療需要があっても利益率が低下することがあります。
医療費の増加は「日本全体で医療に使われた金額の増加」であり、個々の医療機関の利益増加を意味するものではありません。
5.医療機関の経営を圧迫する5つの要因
① 経営者の高齢化
診療所では院長が経営者を兼ねることが多く、院長の高齢化が事業継続に直結します。帝国データバンクは、診療所の休廃業・解散が増えている大きな要因として、経営者の高齢化を挙げています。
② 後継者不足
医師である子どもがいても、別の地域や診療科で勤務している場合があります。また、建物や医療機器の更新、職員の雇用、借入金などを引き継ぐ負担が大きく、親族内承継が成立しないこともあります。
③ 人件費の上昇と人材不足
医療機関には、医師だけでなく、看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、リハビリテーション専門職、医療事務など多くの職種が必要です。
人材不足の地域では、職員を確保するために賃金を引き上げる必要があります。夜勤や救急医療を維持する病院では、必要な人員を確保できないこと自体が病床や診療機能を縮小する原因になります。
④ 医療材料費・光熱費・給食費などの上昇
病院は24時間稼働する設備が多く、電気・ガスなどの価格上昇の影響を受けます。医療材料、医療機器、入院患者の給食、委託費などの上昇も経営を圧迫します。
⑤ 診療報酬が公定価格であること
診療報酬は、保険医療サービスの対価として国が定める公定価格です。医療機関が物価上昇分を自由に価格へ転嫁できないため、費用の上昇が収入の増加を上回ると経営が悪化します。
6.病院数の減少は直ちに医療崩壊を意味するのか
医療機関数が減少したという事実だけで、直ちに「医療崩壊」と判断することはできません。
人口が減少する地域では、医療需要も変化します。複数の小規模病院に医師や看護師が分散している場合、医療機能を一定の病院へ集約した方が、救急医療や専門医療の質を維持しやすくなることもあります。
一方で、単に医療機関を減らせばよいわけでもありません。医療機関の統合や機能転換を進める際には、次の点を確認する必要があります。
・救急患者の搬送時間が過度に長くならないか
・妊産婦、小児、高齢者が受診できる体制があるか
・公共交通機関が乏しい地域で通院手段を確保できるか
・退院後の在宅医療や訪問看護が整備されているか
・災害時や感染症流行時に必要な医療提供能力を維持できるか
「医療崩壊」を考えるときのポイント
重要なのは医療機関の数だけではなく、住民が必要なときに必要な医療へアクセスできるか、医療従事者が持続可能な形で働けるか、必要な医療機能が地域に残っているかです。
7.地域医療構想との関係
地域医療構想は、将来の人口構造や医療需要を見据え、地域に必要な病床機能と医療提供体制を検討する仕組みです。
「地域医療構想は病床を一律に削減する制度である」と単純化して覚えるのは適切ではありません。目的は、地域の医療需要に応じて病床機能の分化・連携を進めることです。
| 病床機能 | 主な役割 |
|---|---|
| 高度急性期 | 急性期患者に対して、状態の早期安定化に向けた高度な医療を提供する |
| 急性期 | 急性期患者に対して、状態の早期安定化に向けた医療を提供する |
| 回復期 | 在宅復帰に向けたリハビリテーションや継続的な管理を行う |
| 慢性期 | 長期にわたり療養を必要とする患者を受け入れる |
超高齢社会では、急性期治療だけでなく、回復期リハビリテーション、慢性期医療、在宅医療、介護サービスを切れ目なくつなぐことが重要です。
急性期病院
↓
回復期病院・地域包括ケア病棟
↓
自宅・高齢者施設
↓
診療所・訪問看護・介護サービスによる支援
診療所の休廃業が増えると、病院から退院した患者を地域で支える「かかりつけ医」や在宅医療の担い手が不足する可能性があります。このため、病院の再編と診療所の維持を別々の問題として考えるのではなく、地域全体の医療・介護提供体制として捉える必要があります。
8.医師偏在・診療科偏在との関係
日本全体の医師数が増加しても、すべての地域や診療科で医師が充足するわけではありません。
医師の偏在には、大きく分けて次の二つがあります。
地域偏在
都市部には医師が集まりやすい一方、地方やへき地では医師の確保が困難になることがあります。
診療科偏在
産婦人科、小児科、救急科など、勤務負担や訴訟リスクなどが大きい診療科で医師確保が難しくなることがあります。
医療機関が存在していても、必要な診療科の医師がいなければ、その機能を十分に果たすことはできません。反対に、複数の医療機関へ少人数の医師が分散すると、当直や救急対応の負担が増えることがあります。
医療機関の集約化には、医療従事者を一定規模の拠点へ集め、専門的な医療や24時間対応を維持しやすくする面があります。ただし、患者の移動距離が増えるという不利益とのバランスが必要です。
9.医師の働き方改革との関係
2024年4月から、勤務医に対する時間外・休日労働の上限規制が適用されました。これは、医師の健康を守り、長時間労働に依存した医療提供体制を見直すために重要な改革です。
一方、これまで少人数の医師による長時間労働で救急、当直、手術、地域への医師派遣などを維持してきた医療機関では、勤務体制の再編が必要になります。
・複数主治医制やチーム医療の推進
・医師事務作業補助者の活用
・特定行為研修を修了した看護師などへのタスク・シフト/シェア
・宿日直許可を含む勤務体制の適正化
・医療機関間の機能分担と連携
働き方改革は医療提供体制を弱めるための制度ではありません。しかし、医師数や連携体制が不十分なまま長時間労働だけを減らそうとすれば、救急受入れや診療時間を縮小せざるを得ない場合があります。
国試では、「患者の安全」と「医療従事者の安全」の両方を守るという視点が重要です。
10.医師国家試験ではどのように出題される?
医師国家試験では、「医療機関の休廃業件数は何件か」という時事問題が、そのまま問われる可能性は高くありません。
しかし、このニュースの背景にある次のテーマは、公衆衛生、医療制度、地域医療に関する問題として押さえておく必要があります。
・我が国の医療提供体制
・医療法と医療計画
・地域医療構想
・地域包括ケアシステム
・医師の地域偏在と診療科偏在
・医療保険制度と診療報酬
・在宅医療と多職種連携
・医師の働き方改革とタスク・シフト/シェア
国試で選びやすい誤答
| 誤った理解 | 正しい整理 |
|---|---|
| 休廃業・解散はすべて経営破綻である | 高齢化や後継者不在による自主廃業も含まれる |
| 医療費が増えればすべての病院が儲かる | 人件費や材料費も増えるため、利益が増えるとは限らない |
| 地域医療構想の目的は一律の病床削減である | 地域需要に応じた病床機能の分化・連携を進める |
| 医師数が増えれば医師不足は完全に解消する | 地域偏在と診療科偏在が残る可能性がある |
CES医師国試予備校の学習アドバイス
制度問題は用語を単独で暗記するだけでは得点が安定しません。「人口構造の変化→医療需要の変化→医療機能の再編→地域包括ケア」という因果関係をつなげて理解しましょう。
確認問題
問1.2024年に休廃業・解散した医療機関の大部分を占めたのはどれか。
A.大学病院
B.診療所
C.特定機能病院
D.地域医療支援病院
正解:B.診療所
2024年の休廃業・解散722件のうち、診療所が587件を占めました。
問2.地域医療構想の目的として最も適切なのはどれか。
A.すべての病院の病床を一律に削減する
B.医師国家試験の合格者数を削減する
C.地域の医療需要に応じて病床機能の分化・連携を進める
D.すべての入院医療を在宅医療へ変更する
正解:C
地域医療構想は、将来の医療需要に応じた医療提供体制を地域ごとに検討する仕組みです。
問3.国民医療費が増加しても、個々の医療機関の利益が増えるとは限らない主な理由はどれか。
A.保険診療では医療機関が診療価格を自由に設定できるから
B.医療機関には人件費が発生しないから
C.人件費や医療材料費などの費用も上昇するから
D.国民医療費には薬剤費が含まれないから
正解:C
保険診療は公定価格であり、医療機関はコスト上昇分を自由に価格転嫁できません。
問4.医師数が増加しても地域の医師不足が残る理由として適切なのはどれか。
A.地域偏在や診療科偏在があるから
B.医師は医療機関で勤務できないから
C.医療法によって地方勤務が禁止されているから
D.病院には医師を配置する必要がないから
正解:A
医師の総数だけでなく、地域別・診療科別の分布を確認する必要があります。
まとめ
・2024年の医療機関の休廃業・解散は722件だった
・2025年には823件となり、2年連続で過去最多を更新した
・休廃業・解散の中心は病院ではなく診療所である
・休廃業・解散には倒産だけでなく、高齢化や後継者不在による閉院も含まれる
・医療費が増加しても、人件費や材料費が上がれば医療機関の利益は増えない
・医療機関数の減少だけで医療崩壊と判断することはできない
・国試では地域医療構想、医師偏在、在宅医療、働き方改革と関連づけて理解する
今後の日本では、人口減少に合わせて医療提供体制を再編しながら、高齢者が増える地域の医療需要に対応するという難しい課題に直面します。
重要なのは、単純に病院数や病床数を増減させることではありません。急性期、回復期、慢性期、在宅医療、介護をつなぎ、限られた医療人材を持続可能な形で配置することが求められます。
医師国家試験の制度問題も、個別の用語を丸暗記するのではなく、「なぜその制度が必要なのか」という社会的背景から理解しましょう。
医療制度・公衆衛生の苦手分野をマンツーマンで対策
CES医師国試予備校では、受講生一人ひとりの理解度、過去問の正答率、苦手分野に合わせて、医師国家試験対策を完全マンツーマンで行っています。
公衆衛生や医療制度についても、単なる語句暗記ではなく、制度の目的、社会的背景、過去問での問われ方まで整理します。
よくある質問
医療機関の休廃業・解散722件は、すべて病院ですか?
いいえ。2024年の722件の内訳は病院17件、診療所587件、歯科医院118件であり、診療所が大部分を占めています。
休廃業・解散はすべて赤字による倒産ですか?
いいえ。経営者の高齢化、健康上の問題、後継者不在などによる自主的な閉院も含まれます。倒産とは区別して考える必要があります。
医療費が増えているのに、なぜ病院経営は苦しくなるのですか?
医療費の増加は日本全体で医療に使われた金額の増加です。個々の医療機関では、人件費、医療材料費、光熱費、設備費などが収入以上に増加すると、利益が減少します。
地域医療構想は病床削減を目的とした制度ですか?
一律の病床削減だけを目的とする制度ではありません。将来の医療需要を見据え、地域ごとに必要な病床機能の分化・連携を進めることが基本です。
医療機関の休廃業は医師国家試験に出題されますか?
件数そのものよりも、その背景にある医療提供体制、地域医療構想、医師偏在、在宅医療、診療報酬、医師の働き方改革などが出題対象になります。
参考文献・引用資料
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帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)」
-
帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)」
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帝国データバンク「医療機関の倒産動向調査(2026年上半期)」
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厚生労働省「令和6年版医師国家試験出題基準について」
-
厚生労働省「地域医療構想」
-
厚生労働省「医師の働き方改革」
※本記事は、医師国家試験対策を目的として医療制度に関する公表資料を整理したものです。個別の医療機関の経営状態や、特定地域の医療提供体制を評価するものではありません。
