医師国家試験|一般・臨床・必修の読み方は「3つの思考」を使い分けて対策
- どこを見るか
- どう読むか
- どう判断するか
を、”国試の過去問例”を交えながら解説します。
参考:厚生労働省「第118回医師国家試験問題」
「第119回医師国家試験問題」
一般・臨床・必修は「読むべき場所」が違う―問題形式ごとの特徴を掴む
一般問題では、疾患や病態、公衆衛生に関する一般的な知識が問題となるため、読み方として問題になることは多くありません。ただし、一部一般問題では婉曲的に聞いてくる問も存在するため、「問題文が暗示していること」を読み取る能力が必要となるケースがあります。
臨床問題では、疾患や状況に対して適切な検査所見や処置を選ぶ内容となっています。臨床問題では適切な鑑別を想起し、その疾患に特徴的な所見や症状、治療等をスムーズに思い出す必要があります。
必修問題では、臨床問題とほぼ共通していますが、「まず行うべき治療」、「直ちに行うべき検査」など、臨床問題とは異なりその場での対応を想起して回答する問題が多いのが特徴的です。必修科目の臨床問題に関しては1問3点であることから、確実な対応が求められます。
つまり、3つの形式で想定される回答の手順が違うのです。国試に慣れた人ほど、「問題文の読み方そのもの」を形式ごとに切り替えています。
一般問題:問題文で示唆されている知識に適切に回答する
一般問題の本質は知識です。症例文は短く、問われているのは「語句レベルの理解」です。
しかし、一部問題では「問題文で示唆されていることを適切に読み取る力」が求められるときがあります。たとえば、以下のような問題が典型です。
118D12
慢性腎臓病<CKD>の重症度分類に必要なのはどれか。2つ選べ。
- a 血圧
- b 性別
- c 尿比重
- d 年齢
- e 腹囲
これは慢性腎不全の重症度分類を聞かれている問題ですが、肝心の尿蛋白とeGFRが選択肢にありません。ここで、「eGFRは年齢、性別、血清Cre値から計算できる」ことを思い出す必要があります。すなわち、この問題で出題されているのは「CKDの重症度分類」+「eGFRの計算方法」ということになります。したがってこの問題の正解はb, dとなります。
このように、一般問題とはいえ一部の題意の読み替えが必要な問題が存在します。
臨床問題:病態鑑別に主眼をおいて問題文を読む
臨床問題は鑑別の推論の問題であり、症例文をどれだけ把握できるかが正解への近道となります。
119A51
10歳の女児。腹痛を主訴に両親に連れられて来院した。今朝から腹痛が出現し、次第に増強してきたため受診した。3歳時に遺伝性球状赤血球症と診断され、小児科で定期的な診察を受けていた。体温37.2℃。脈拍100/分、整。血圧110/58 mmHg、呼吸数16/分。皮膚は黄染を認める。腹部は右季肋部に圧痛を認め、左肋骨弓下に脾を4 cm触知する。
血液所見:赤血球320万、Hb 9.2 g/dL、Ht 33%、白血球9,500、血小板20万。
血液生化学所見:総ビリルビン22.3 mg/dL、直接ビリルビン15.8 mg/dL、AST 125 U/L、ALT 647 U/L、γ-GT 313 U/L(基準9〜32)。CRP 0.9 mg/dL。
腹部単純CT水平断像(別冊No. 20A)と腹部造影CT冠状断像(別冊No. 20B)を次に示す。
適切な処置はどれか。
- a 血漿交換
- b 光線療法
- c 脾臓摘出術
- d 腹腔鏡下胆囊摘出術
- e 内視鏡的胆管ドレナージ
【画像出典】第119回医師国家試験 別冊 No,20(厚生労働省)
症例のポイント整理
10歳女児。主訴は腹痛と黄疸増悪です。既往に遺伝性球状赤血球症(HS)があり、これは溶血性貧血を引き起こし、ビリルビン結石ができやすい疾患です。
この症例では ALT / AST 上昇、皮膚黄染、脾腫から溶血の亢進を見抜き、直接優位のビリルビン上昇による胆汁排泄障害、およびCT像から胆石が指摘できるかが正答を得られる筋道となります。
このように、臨床問題では適切に病態を見抜き、それに対する検査や処置、治療を選択する必要があります。
必修問題:「知識より優先順位」
必修は、与えられた状況や病状に対して「患者の安全上、まず何をすべきか?」を問う問題が多いです。また、医師としても倫理的判断が問われる設問も存在します。次のような問題が必修問題には多く存在します。
119B26
65歳の男性。糖尿病のため教育入院中である。医師が病棟の廊下を歩いているときに、病室内から大きな音が聞こえた。急いで病室へ駆けつけると、患者がベッドサイドに倒れており、呼びかけに対して反応がない。
まず行うべき対応はどれか。
- a 応援を呼ぶ。
- b 頸椎を固定する。
- c 胸骨圧迫を開始する。
- d 呼吸の有無を確認する。
- e 頸動脈の拍動を確認する。
必修問題にはこのように「最初に行うべき医療行為」を問うものが多いです。必修では、知識よりも「何よりも優先すべきは安全確保」という絶対的な基本事項が問われる事が多いです。この問題では現在一人で患者が意識不明で倒れている状態を発見しているので、何よりも「a 応援を呼ぶ」ことにより対応人員を増やすことが重要です。
3つの形式をまとめると
これまで触れた3系統の問題の読み方をまとめると以下の表のようになります。
この“読み方の切り替え”こそが、国試の総得点を大きく押し上げるテクニックです。
| 分類 | 見る場所 | 思考法 |
|---|---|---|
| 一般問題 | 問題文で暗示されている内容 | 知識で切る |
| 臨床問題 | 問題文中の臨床所見 | 病態推論 |
| 必修問題 | 安全性の確保が最優先 | 初期対応 |
まとめ
医師国家試験は、3つの異なる問題形式が混在した試験となっています。3種類の問題が混在していることから、同じ読み方で解くと得点が伸び悩みます。読み方を切り替えることで国家試験の解きやすさが格段に変わります。
- 一般問題:知識を問う問題。示唆を読み取る力が重要
- 臨床問題:鑑別・推論の問題。症例把握が正解への近道
- 必修問題:優先順位の問題。患者の安全確保が最優先

