【2025対応】医師国家試験に合格する5つの学習戦略|攻略に向けた傾向と対策

 

医師国家試験徹底攻略法

医師国家試験は、医学生にとって最大の試験であり、人生を左右する国家試験です。毎年約10,000人が受験し、合格率は90%前後とされていますが、この数字に安心してはなりません。落ちる人には明確な共通点があり、逆に受かる人には戦略的な学習」と「合格に直結する技術が存在します。ここでは、医師国家試験を徹底的に攻略するための具体的な戦略について、以下の5項目に沿って解説します。

 

① 病態理解の重要性について

医師国家試験は、単なる知識の羅列ではなく、「臨床的思考力」が問われる問題が増加傾向にあります。特に近年の出題では、病態生理を理解していないと選択肢を絞り込むことができません。

【具体例:高プロラクチン血症の原因 107A15】

「高プロラクチン血症をきたすのはどれか。2つ選べ」という問題です。ここで問われているのは、視床下部・下垂体系のホルモン分泌作用や抑制作用を理解しているかどうかです。

  1. プロラクチン(PRL)産生性の下垂体腺腫からPRLが産生される
  2. 視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)によってPRL分泌が軽度亢進する。TRHは下垂体前葉からTSH分泌を亢進して、最終的に甲状腺ホルモンであるT3、T4の分泌が亢進する。
  3. 視床下部から分泌されるプロラクチン抑制因子(PIF、正体はドパミン)によってPRL分泌が抑制される。

この機序が理解できていれば、以下3パターンでPRL産生が亢進して高プロラクチン血症をきたすことが導けます。

  1. 下垂体腺腫からの機能性のPRL分泌
  2. 橋本病などの甲状腺機能低下症によるフィードバックでTRH分泌が亢進したとき
  3. ドパミンブロッカーによってPRL分泌を抑制するドパミンが抑制されたとき

病態を知らずに表面的に「下垂体腺腫、橋本病、ドパミンブロッカー」とだけ覚えていても、確かな記憶(暗記)の定着には繋がらず、試験本番で正確に論理的にその病態や知識を思い出すことが不十分になります。

【なぜ病態理解が必要なのか】

  • 病態理解により、「なぜこれが原因となるのか」だけでなく、「なぜこの治療が必要か」「なぜこの検査が適切か」を説明できるようになります。
  • 医師国家試験の問題の多くが、「疾患 → 症状 → 検査 → 診断 → 治療」の一連の流れに沿って構成されており、途中の段階が分からなくても前後から推察できます。

また、病態の理解なく暗記に頼ると、記憶の定着が不十分になるだけでなく、「初見の問題」に対応できません。近年は見たことのない問題もあり、「考えさせる」設問が中心です。したがって、病態理解は基盤として絶対に外せない要素になります。

② 暗記の重要性について

「理解が大切」と言われる一方で、医師国家試験には「どうしても暗記しないと対応できない知識」も少なくありません。特に以下のような領域は暗記が前提です。

【暗記必須の代表例】

  • 解剖構造、動脈の分岐や枝について
  • 小児発達指標(月齢ごとの運動、言語概念理解、社交性など)
  • 錐体路が通る経路
  • Apgarスコア
  • 感度・特異度の定義
  • 感染症の法定分類(1,2,3類感染症に該当する疾患名)
  • 細菌と抗菌薬の感受性パターン

【具体例:小児発達指標について 112F13】

「発達過程において、可能になる年齢が最も遅いのはどれか」という設問。これは純粋に小児発達指標の丸暗記が必要です。病態理解だけでは絶対に解けません。

【理解と暗記のバランス】

  • 理解:臨床推論に必要、未知の問題にも対応可
  • 暗記:「解剖」「細かい分類」「公衆衛生」といった、知識・分類・制度やルール等に対応可

実際の勉強では、病態理解を土台にしつつ、頻出知識の暗記を反復・口頭試問などでアウトプットしましょう。記憶の定着には、反復とアウトプットが重要です。

③ 優先順位と科目配分について

医師国家試験対策で最も重要なのは、どこにどれだけ時間をかけるか」の戦略です。すべての分野を均等に勉強することは現実的ではありません。

【優先順位】

1. メジャー科(内科全般、外科)

  • 出題数が多く、臨床問題にも頻繁に登場
  • 得点源かつ、臨床医としての基礎にも直結

2. 公衆衛生、小児科、産婦人科

  • 出題比率が高く、内容も暗記+制度中心
  • 小児や産婦の病態は一見難解だが、頻出パターンを押さえれば得点しやすい

3. マイナー科(皮膚、眼、耳鼻、整形、精神など)

  • 各科数問程度だが、正答率が70~80%程度と合否を分けるレンジの問題が多く、落とすと致命的
  • 一方で、細かい知識は出にくいため、基本事項のみ覚えるのが効率的

上記のうち1,2が特に重要ですので、1,2については重点的に学習をしてください。マイナー科は「時間をかけすぎないが、落とさない」という絶妙なバランス感覚が必要です。医師国家試験では、マイナー科については極端な難問は出題されず、基本知識が中心に問われます。

④ 医師国家試験出題範囲改訂について(118回から)

医師国家試験は出題基準に基づいて作問されています。118回医師国家試験から、出題基準が改訂されました。これにより、いくつかの新規トピックが追加されており、注意が必要です。

【追加された代表的な項目】

  • 遺伝性乳癌卵巣癌症候群
  • ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
  • 心臓震盪
  • アデレード宣言
  • 患者・市民参画

これらの追加項目は、直近で実臨床や社会医学系において重要性が増している内容であり、出題の可能性が高いと考えられます。また追加された意図を考えると、「出題したいから」という目的は容易に想像できます。実際、ヘパリン起因性血小板減少症については、119D8で出題されていますし、アデレード宣言についても、119F7で出題されています。

【学習方法】

  • 改訂後の出題基準は、厚生労働省の公式ページで公開されています。
  • 過去問演習をしつつ、新範囲については概念等を理解しておくのが無難です。

⑤ 医師国家試験で使えるテクニックについて

最後に、知っているだけで得点につながる試験対策テクニックを紹介します。ただし、これはあくまでもテクニックですので絶対ではないです。上記①~④を実践してもそれでも分からない問題もあります。そのときに正解の選択肢を選ぶ確率を1%でも上げるための方法になります。国家試験は「人が作った問題」であり、解けるように設計されています。その構造を理解すれば、知らない問題にも対応可能です。

【テクニック①:選択肢をよく見る】

113D35:「この患者で予想される初見はどれか」

副腎結核に伴うAddison病が疑われる症例です。以下の選択肢で答えはbの選択肢になりますが、選択肢をよく見るとテクニックが使えます。

  1. a 好酸球減少
  2. b 副腎の石灰化
  3. c 血中ACTH低値
  4. d 血漿レニン活性低下
  5. e 尿中遊離コルチゾール高値

上記選択肢ですが、b以外の選択肢は全て、血液検査や尿検査の値の大小関係について述べているのに対して、bの選択肢のみ画像検査の所見となっています。bの選択肢として、誤りの選択肢を作りたい場合、血液検査や尿検査の所見を配置して大きいか小さいかを逆にすることで簡単に誤りの選択肢を作成することができます。にも関わらず、1つだけ画像検査の所見を配置しているため、選択肢を見ただけでも、正解の可能性が高いと推察されます。

【テクニック②:連問は2問目以降の問題文をよく読む】

連問は2問目以降の問題文が常に見られるため、連問の1問目が分からないときは2問目以降の問題文にヒントがあるときがあります。

108B53~55では、55番の問題文を先に読むことで、54番の問題が解けてしまうようになっています

108B54「この患者で他に予想される症候はどれか」という問題であり、108B55の問題文では、「甲状腺ホルモン補充療法を開始した。」と記載があります。つまり、甲状腺ホルモン補充療法を開始するということは甲状腺機能亢進症ではなく、甲状腺機能低下症の患者であると分かってしまいます。そのため、108B54の問題では、甲状腺機能低下症の症候を選べばよい問題となるのです。

総まとめ

医師国家試験は、戦略を持って臨めば合格可能な試験です。以下の5項目を押さえることで、合格ラインを確実に越えることができます。

  1. 病態理解:臨床思考の軸
  2. 暗記:解剖や分類には必須
  3. 科目ごとの配分:効率的な学習
  4. 出題範囲の改訂:出題可能性の高い新領域の理解
  5. 実践的テクニック:上記1~4を実践しても、それでも分からない問題への対処

学習の質を高める最大のコツは、「理解したうえで覚え、使いながら定着させること」です。
この戦略を活かし、ぜひ合格を掴み取ってください。