USMLEとは?Step1〜3の試験内容・受験時期・日本の医師国家試験との違い
そもそもUSMLEとは何か?
USMLEはアメリカの医師免許取得に必要な統一国家試験で、米国内外の医学部在学生・卒業生が対象となります。医学知識、臨床推論、コミュニケーション能力を段階的・体系的に評価することを目的とし、以下の4つの試験で構成されています。
- Step1
- Step2 CK
- OET(旧Step2 CSの代替となる医療英語試験)
- Step3
USMLEに合格すると、外国医学部卒業生はECFMG Certificationを取得でき、アメリカの臨床研修(Residency)のマッチングに応募するための資格が得られます。
Step1、Step2 CK、OET、Step3の役割や試験範囲、合格率
Step1
- 内容
- 基礎医学(解剖、生理、生化学、薬理、微生物、免疫、病理など)
- 形式
- 1日試験。長文ケースを含む択一式、休憩1時間を含めた約8時間。
- 目的
- 基礎医学の深い理解と、臨床に応用する力を評価。
- 合格率
- 米国医学部生 約95%、外国医学部卒 約85%。
- 備考
- 以前は試験成績が3桁のスコアで評価されていたが、2022年以降は合否判定のみ。
Step2 CK
- 内容
- 内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、救急など臨床全般。
- 形式
- 1日試験。長文ケース中心n択一式、休憩1時間を含めた約9時間。
- 目的
- 臨床の診断力と治療判断力を評価。
- 合格率
- 米国医学部生 約98%、外国卒 約90%。
- 備考
- 試験の中ではこのスコアがResidency応募時に最重要視される。
OET(Occupational English Test)
- 内容
- Listening、Reading、Writing、Speakingを医療文脈で評価。
- 形式
- 自身のPCで受験。Speakingはビデオ通話で模擬患者(試験官)とやり取り。
- 目的
- 医療現場での英語コミュニケーション能力を確認。
- 備考
- 旧Step2 CS(実技試験)の代替。合格基準スコアを満たせばOK。
Step3
- 内容
- 診断アルゴリズム、治療選択、症例シミュレーション(CCS)など。
- 形式
- 2日試験。
- 目的
- 独立して診療できるレベルの総合力を確認。
- 合格率
- 米国医学部生 約97%、外国卒 約85%。
アメリカではどのタイミングで受験するものなのか?
アメリカの医学生(MD課程)は、次のようなスケジュールで受験します。
1〜2年次(Preclinical)
基礎医学を学ぶ。2年終了時にStep1を受験。
3〜4年次(Clerkship)
臨床実習を行う。4年次までにStep2 CKを受験。
卒業後(Residency 1年目中)
Step3を受験し、独立診療能力を証明。
日本の医学生が受験する場合は、5〜6年生または卒後に受験することが多く、日本の国家試験対策や実習・日々の臨床業務との両立が必要になる点が特徴です。
受験するとどのようなメリットがあるのか?
USMLE受験の最大のメリットは、アメリカの臨床研修(Residency)プログラムに応募できる資格を得られることです。
さらに次のような利点があります。
- 医学を英語で体系的に学べる
- 海外研究留学や国際学会での発表に強くなる
- 国際的に通用する臨床推論力を身につけられる
- 最新の医学知識を英語で理解できる
- 日本国内でも英語症例や海外文献への対応力が上がる
USMLE学習そのものが、国内外で通用する臨床医としての基礎力を高めるトレーニングになります。
日本の医学部で受験するCBTや医師国家試験との違いは何か?
USMLEと日本のCBT・国家試験には、目的、内容、難易度の面で大きな違いがあります。
USMLEの特徴
- 目的:臨床医として安全に診療できる能力を米国基準で評価
- 出題言語:英語
- 内容:基礎医学と臨床推論、治療判断が中心
- 形式:長文ケースが多く分量が多いため、長時間の試験だが時間に余裕はない
- 評価:Step1はPass/Fail、Step2 CKとStep3はスコア制
CBT・日本の医師国家試験の特徴
- 目的:医学教育の達成度評価(CBT)と国家資格取得(国試)
- 出題言語:日本語
- 内容:知識確認が中心。分野によってはやや専門的な知識の理解・暗記を要する
- 形式:短文の選択式が中心
- 評価:CBTの正答率が一部就職に響く場合はあるものの、基本的に合否のみ
本質的な違いは、USMLEが「臨床推論のプロセス(なぜ、どうして)」を重視するのに対し、日本のCBT・国家試験は「正しい知識を覚えているか(何を)」をより重視している点にあります。
まとめ
USMLEは、アメリカで医師として働くための登竜門であり、世界標準の医学的思考力を身につけるための試験体系です。
Step1からStep3までを通じて、基礎医学、臨床判断、医療英語、総合診療力を段階的に鍛えることができるため、国際的なキャリアを志す医学生・若手医師にとって大きなメリットがあります。

