Step1の壁を越える:高得点者が実践した科目別攻略法 ─ Biochemistry, Physiology, Pathologyを軸に、思考の流れで学ぶ。
USMLE Step1は暗記量で勝負が決まる試験ではありません。高得点者ほど、問題文から疾患像を立ち上げ、根拠を積み上げて結論に到達する「思考の順番」を固定しています。
本ページでは、得点差がつきやすい3本柱(Biochemistry / Physiology / Pathology)を軸に、科目別の攻略法を「解法の手順」として整理します。
対象:Step1対策を開始したが点数が伸びない方/UWorldを回しているのに再現性が出ない方/統合問題で迷う方
こんな悩みがある方へ
- First AidやUWorldを回しているのに、点数が伸びない
- 「分かったつもり」なのに、少しひねられると落とす
- 暗記に偏っていて、臨床推論の形になっていない
- 間違えた理由が「知らなかった」しか残らない
- 科目別に勉強しているのに、本番では統合問題で迷う
結論:高得点者が使う共通フレーム「3ステップ推論」
1現象を言語化する(何が起きている?)
症状・検査・バイタル・年齢・時間経過から、現象を一文で言い切ります。
例:脂肪便+体重減少=脂肪吸収障害、発熱+心雑音+塞栓所見=感染性心内膜炎疑い、など。
2メカニズムに落とす(なぜ起きる?)
現象を、病態生理・代謝経路・病理変化へ接続します。
「どの器官/どの細胞/どの経路/どの受容体・酵素/どの免疫反応」が鍵かを決める工程です。
3鑑別を絞り、選択肢を撃つ(どれが最も合う?)
最後に選択肢を見て、矛盾しないものを選びます。
重要なのは、選択肢を眺めて思い出すのではなく、先に推論してから選ぶことです。
Biochemistry:暗記科目ではなく「因果の科目」に変える
生化学は範囲が広く、挫折しやすい領域です。しかし頻出は「経路の丸暗記」ではなく、破綻したときに何が起きるか(溜まる/不足する/臓器症状)です。つまり、因果関係で解く科目です。
Biochemistry攻略の型
現象の入口を決める:症状→代謝異常の方向へ
低血糖、乳酸アシドーシス、黄疸、神経症状、筋力低下、尿の異常、発達遅滞などの入口から、糖代謝/脂質代謝/アミノ酸代謝/ヘム代謝/尿素回路/プリン・ピリミジンへ振り分けます。
ボトルネックを特定する:酵素を1つに絞る
「どこが止まると、何が溜まり、何が不足し、どんな臓器症状が出るか」を一点突破で判断します。
合併ヒントを拾う:遺伝形式・臓器・誘因
X連鎖/常染色体劣性・優性、肝・筋・赤血球・脳、絶食・運動・感染・薬剤など。これらが揃うと暗記が推論に変わります。
点が伸びない典型パターンと修正
- 経路の図を写して満足止まった後の世界(溜まる/不足/臓器)を言語化する練習へ
- 疾患名だけ暗記溜まる/減る/代替経路/臓器障害をセットで整理
- ビタミンが混乱名前から入らず、「何の反応を助けるか」から逆算
短期で効く学習手順(CES推奨)
- 頻出テーマを先に固定(糖代謝、尿素回路、ヘム、脂肪酸酸化、ビタミン)
- 各テーマで「現象→機序→選択肢」の3文を作る
- UWorldで同一テーマを連続演習し、誤答理由を「機序のどこが曖昧か」で分類
- First Aidへ戻り、1ページを因果ストーリーとして説明できる形にする
Physiology:グラフと式を「臨床の言葉」に翻訳する
生理は理解が得点に直結します。高得点者は、式やグラフを覚えるのではなく、それを臨床所見(バイタル・検査・代償)に翻訳して解いています。
Physiology攻略の型
制御系として捉える:入力・センサー・出力
何が入力(血圧、血糖、浸透圧、CO2など)で、どこがセンサー(頸動脈洞、JGA、膵β細胞など)で、何が出力(心拍、血管抵抗、換気、尿量、ホルモンなど)か。ここが固まると丸暗記が減ります。
変化は方向で覚える:上がる/下がる/代償する
数値暗記より方向性が重要です。酸塩基、出血、ショック、利尿薬などは方向を言い切れるだけで選択肢が消えます。
同じ現象を統合する:章をまたいでつなぐ
例:浮腫を循環(スターリング)+腎(RAAS)+肝(アルブミン)+内分泌(ADH)で統合すると、出題章に依存しません。
点が伸びない典型パターンと修正
- グラフ暗記原因→代償→結果の順に説明できる形へ
- 腎が苦手クリアランス、分画排泄、尿細管部位(PCT/LOH/DCT/CD)を固定してから問題へ
- 呼吸が苦手肺胞換気、V/Q、A–a gradientを「いつ使うか」で整理
短期で効く学習手順(CES推奨)
- 制御系テンプレ(入力・センサー・出力)を作る
- 主要テーマを方向表にする(酸塩基、利尿薬、ショック、換気)
- UWorldの誤答を「臨床の一文」に翻訳して残す
- 週1回、混合問題で統合力をチェック
Pathology:病理は「診断の言語」
病理は疾患名当てではなく、所見(症状・検査・画像・組織)を診断の言語に変換する力が問われます。BiochemistryとPhysiologyがつながる科目です。
Pathology攻略の型
病変の種類を決める
炎症(急性/慢性)、腫瘍(良性/悪性)、血管障害(血栓/塞栓/梗塞)、免疫(I〜IV型)、感染。最初にカテゴリが決まれば鑑別は半分終わります。
組織の言葉(確定札)を拾う
代表的な所見は「確定札」です。疾患名のトリガーではなく、病態を確定する札として運用します。
なぜその所見になるかを生理へ戻す
迷ったら病態生理に戻る。病理→生理→臨床の戻り道があるほど安定します。
点が伸びない典型パターンと修正
- 病理写真を眺めるだけ見た瞬間に「何のプロセスか」を一言で言う練習へ
- 疾患が増えるほど混乱確定札(所見)と周辺情報(疫学・危険因子)を分けて整理
- 腫瘍が苦手組織型+産生物+転移先の3点セットで固定
短期で効く学習手順(CES推奨)
- 頻出カテゴリ(炎症・腫瘍・血管・免疫)で枠を作る
- 各疾患に確定札を1つ決める(組織・検査・合併症など)
- 誤答を「確定札不足」か「カテゴリ判断ズレ」かに分類
- 週末に混合100問で、カテゴリ判断→確定札→機序の流れを反復
3本柱を1本の思考ラインに束ねる
Step1の本質は統合です。科目別で終わらせず、3科目を一本化する問いを立てます。
統合の問いの立て方
- この症状は何の現象か(生理)
- その現象は何の機序で起きるか(生化学・生理)
- その機序は組織ではどう見えるか(病理)
- 最終的に検査や治療の方向はどうなるか(生理→臨床)
この統合ラインができると、覚えるべきものがバラバラの単語ではなく、つながった因果になります。その結果、必要暗記量が減り、定着が上がります。
復習の本質:ノートではなく「誤答の型」を作る
高得点者は間違いを集めません。間違い方のパターン(型)を潰します。復習が変わると得点が変わります。
代表的な誤答パターン
1問題文の現象を取り違えた(読みのミス)
2機序の接続が抜けた(知識の穴ではなく連結の穴)
3確定札を持っていない(病理・微生物・薬理に多い)
4選択肢の比較で負けた(似たものの識別が弱い)
誤答をこの4分類で整理し、次の1問で再現できる「手順」に戻してから、同テーマで連続演習します。
CES USMLEコースの学習設計
攻略法は読んで終わりでは意味がありません。重要なのは、あなたの現状に合わせて「何を、どの順番で、どれくらい」やるかを設計し、週次で軌道修正することです。
支援内容(例)
- 現状診断UWorld / NBMEの分析、弱点の型分類
- 科目別→統合への学習計画週単位タスク設計
- 復習テンプレ提供誤答の型、因果の文章化、暗記の最小化
- 学習カウンセリング継続とリズム作り
- 必要に応じた個別指導理解の穴ではなく思考手順の矯正
よくある質問
Q1. Step1は暗記量が多すぎて間に合いません。どうすれば?
暗記を増やすより、因果(現象→機序→確定札)に変えることが先です。単語がつながると必要量が減り、定着が上がります。
Q2. Biochemistryが特に苦手です。最初にやるべきことは?
経路の暗記ではなく、止まる→溜まる→不足→臓器症状を一文で言えるようにすることです。頻出テーマを先に固定すると伸びやすくなります。
Q3. Physiologyのグラフ問題が解けません。
グラフを暗記するのではなく、制御系(入力・センサー・出力)として整理し、変化を方向(上がる/下がる/代償)で言語化する練習が有効です。
Q4. Pathologyは覚えたはずなのに迷います。
疾患名の暗記より、確定札(組織・検査・合併症)が不足しているケースが多いです。カテゴリ判断→確定札→機序の順で復習すると安定します。
Q5. どの教材を軸に学ぶのが良いですか?
基本はFirst Aidで全体像、UWorldで思考手順の訓練、必要に応じて弱点補強です。教材の追加より、復習の型を固定することが重要です。

