【医学部で学ぶということ】臨床実習:精神科

 

精神科の実習が終わりました。

精神科が扱う病気には、うつ病、統合失調症、双極性障害、強迫性障害などがあります。

一番多いうつ病に女性の比率が高いことから、患者は女性が多めです。知らなかったのが、癌患者がうつ病を合併しやすいことです。癌治療は副作用の強い薬剤を使用するため身体的ストレスが強いことに加え、重い病気ということで心にも負担がかかるのです。

 

精神病というと、鉄格子の隔離病棟に置かれベッドに拘束されて奇声をあげて暴れる患者をイメージするかもしれません。しかし実際病棟を見てみると、そのようなイメージとは随分と違っていました。カードキーによる出入り管理はされていますが、ガラスの自動ドアを通って病棟に入ることができます。

内部は明るい色が使われていて、廊下も病室も他の病棟よりも広々としています。多くの患者は通常の会話ができ、一見して精神病患者だとは気づきません。マンガ部屋や中庭、運動場などの施設があり、快適に過ごすことができるように工夫されています。

 

 

ただし、中には強制入院や保護入院によって入院している患者もいます。そうした患者はベッドに拘束されていたり、自由に出入りできない隔離室に入れられていたりします。

隔離室は内装こそ新しいものの、のぞき窓のついた重い鉄の扉、食事を渡す小窓、天井の監視カメラ、仕切りのないむき出しのトイレ、鉄格子のついた窓、厚いコンクリートの壁、布団以外の家具はなし、などまさに牢獄そのもので衝撃的でした。暴れたり出たがる患者に対しては、入室せず鉄格子ごしに部屋の外から診察を行うそうです。

 

隔離室に極力ものを置かないようにしているのは、自殺防止のためと、カメラや窓などを破壊するのを防ぐためです。症状のひどい患者の場合は、しばらくこうした部屋に隔離して、症状が治まるのを待ちます。健常人にとっては気が滅入りそうな部屋ですが、重度の精神病患者は自分を守る心の殻をなくしてしまっている状態なので、こうした部屋で物理的に囲ってあげると落ち着くのです。

 

 

私の大学は強迫性障害(何度も手を洗ってしまう、施錠を何度も確認してしまう、など)の治療が有名で、福岡近郊の精神科医が強迫性障害について集まって話し合う会が毎月開かれています。

実習期間中にもちょうど開かれており、参加してきました。患者を一人呼んで医師がそれぞれ問診を行っていくスタイルだったのですが、多数の医師に囲まれて査問会議のようになってしまっていたので、少し気の毒に思いました。

それでも、多数の専門医の意見によって治療方針を決めてもらえる機会は、貴重です。他県からも多く患者がくるというのもうなずけます。

 

精神科でも心療内科と同じく、臨床心理士が活躍しています。

心理テストには紙にかかれた質問に答えていくものもあれば、絵をかいたり、箱庭を作ったりするものなど、いろいろあります。

分析結果が心理士の主観に影響される側面があり、客観的に結果を捉えるのは難しいですが、患者の治療方針を考える上で参考にされています。

実習でも心理テストを受けさせてもらいましたが、当たっている所もあるかな、という程度でした。人間の心は複雑なので、正確に分析するのはやはり難しいようです。

他の診療科に進む場合、精神科の病棟を見る機会は今後ほとんどありません。貴重な経験として、頭に刻んでおこうと思います。

 

 

次は総合診療科です。

 

 

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