医師国家試験対策!効果的な勉強法と学習計画の立て方
医師国家試験について
医師国家試験は、厚生労働省が2月頭に実施する試験であり、全国の医学部6年生・既卒生が主に受験する試験である。この試験に合格しなければ医師にはなれず、また医業を行うこともできない。医学部医学科の最終目標とも言える試験である。
第112回以降の医師国家試験はA~Fブロックの6ブロックに分かれ、そのうちB、Eブロックが「必修」と呼ばれる分野であり、A、C、D、Fブロックが「一般・臨床」と呼ばれる分野であるとされる。
「必修」ブロックは医師になった上で必須の知識である内科・外科・救急などの知識を中心に問われる分野であり、多くの問題は3、4年次に受験するCBTと遜色無いか少し難しい程度の難易度である。
「必修」ブロックにも一般的な知識を問う問題と、臨床的な知識を問う問題の2種類が用意されており、前者が1点で50問、後者が3点で50問、計100問で200点であるとされる。「必修」ブロックは絶対評価であり、この200点のうち8割の160点が合格ラインである。
次に、「一般・臨床」ブロックは実臨床に即した問題が多く出題されており、「必修」ブロックに比べて難しい問題が多い印象である。このブロックは1問1点とされ300問あり、相対評価であることが特徴である。例年医師国家試験は合格者が受験者全体の91~2%になるように調整されている。即ち、不合格者の数がおよそ8~9%になるように、「一般・臨床」ブロックで合格ラインが毎年変更・調整されているのである。
参考までに、第117回医師国家試験は300点中220点が合格ラインであった。
また、「禁忌」という概念が医師国家試験にはある。これは誤りの選択肢の中でも、その選択肢の行動をしてしまうと患者の命取りになってしまう場合や、臓器の廃絶に繋がる場合、そもそも法令に違反する場合等の選択肢を禁忌選択肢と言い、数個選んでしまうだけで不合格となってしまう。
以上述べた合格ラインを形成する「必修」「一般・臨床」「禁忌」のうち、最も合格ラインを超えるのが難しいのは一般的に「一般・臨床」の分野であると思われる。そのため、本記事においては「一般・臨床」において合格に必要な勉強法などをお伝えしていく。
合格するためには
医師国家試験は、「一般・臨床」の過去問を解いて正答率が8割程度に到達すれば問題なく合格できると思われる。
しかしながら、①CBTでの勉強の程度、②各予備校の授業をどこまで受けているか、③実習・OSCEをどれだけ積極的に取り組んだか、によって過去問の正答率を上げる速度が各々異なる。
例えば、CBTも学年上位の成績で臨床実習も積極的に取り組んだ人と、CBTは追試ギリギリで実習も最低限しかこなしていない人では、国試の過去問の正答率が8割を越えるまでに必要な勉強量が明らかに違ってくる。
これからは医師国家試験において8割を取るための方法を、①CBTの勉強、②各予備校の授業、③臨床実習・OSCEという主に3点に焦点を当てて解説していく。
CBTの勉強
現時点では多くの大学では3年や4年次にCBTが行われ、その後に臨床実習という流れの大学が多いと思われる。
CBTは基礎医学と臨床医学が出題される試験であり、そのうち基礎医学は医師国家試験には殆ど出題されず、臨床医学はCBT・医師国家試験に共通して出題される。CBTで扱われる臨床医学の疾患は非常に多く、医師国家試験の過去問で出題されている疾患のほとんどをカバーしている。
勿論、一部の珍しい疾患はCBTでは出題されず、医師国家試験のみに出題されるのだが、そう言った珍しい疾患は国試でも出題歴が少ない。即ち、CBTで勉強した疾患が医師国家試験でもメインで出題されるという事なのである。
このため、CBTにおいての勉強が進んでいれば、医師国家試験の勉強においても、アドバンテージを得る事ができる。
実際に、CBTの成績と医師国家試験の成績には相関がある事が報告されており[1]、CBTで良い成績を修める事ができる学生は医師国家試験においても成績が良いとの事である。CBTの対策については「CBT/OSCE対策について」を参考にしてほしい。CBTをしっかりと勉強しておく事は国試対策にも繋がっている。
各予備校の授業
私たちCESを含め、医師国家試験対策の授業を様々な予備校が映像授業や対面授業として行っている。医師国家試験の出題範囲は膨大であるため、各予備校が厳選したテーマに沿って勉強し、網羅的に勉強するよりは効率良く国試のポイントを押さえることができる。
その授業を受け、過去問をやり込み、疾患・テーマに関する知識を少しづつインプットしていくのが、多くの学生においての医師国家試験の基本的な勉強スタイルだと思われる。
勿論、理想は大学の授業のみで医師国家試験に合格できる事であるが、大学の授業は国試頻出事項のみを扱っている訳ではなく、網羅的な授業が多いと思われるため、大学の授業のみで医師国家試験を乗り切るにはかなりの勉強量が必要になると思われる。学年上位の学生にはそういった学生もいるかもしれないが、ほとんどの学生は大学の授業のみでは国試を乗り切る事ができないのが現状である。
そのため多くの学生が予備校の授業を併用している。予備校間の差異についてであるが、多少の好み、やりやすさなどはあるが基本的にどの予備校の教材・授業を受けても国試には合格できる。そのため自分に合ったスタイルの予備校を選択すると良い。
授業を受け始める時期であるが、6年生になってから始めても十分余裕を持って間に合うものと思われる。しかしながら、詳しくは次の③の項で説明するが、臨床実習が始まる前に、実習を行う診療科に関連した科目の授業を予習しておくと、より理解が深まる上に記憶に残りやすい。もし余裕があるのならばこのような勉強の方法をおすすめする。
また、6年の後期には卒業試験があるが、卒業試験に合わせて予習的に各科目を勉強する方法もある。だが卒業試験はどこの大学も6年次の後期にあるため、この時期に国試の勉強を始めても間に合わない可能性がある。やはりおすすめの勉強開始時期としては、4~5年次の臨床実習に合わせて1回目の授業を受け、6年次の開始時に2回目の授業に取り組めると良い。
ここまで予備校の授業を受けることを推奨してきたが、予備校の授業を受けるだけで医師国家試験の膨大な出題範囲の知識をインプットする事はほとんどの学生には難しいと思われる。
そのため自分で知識を整理し、記憶する必要がある。知識を整理するには、自分で科目ごとのノートを作成するなどの手法が考えられるが、多くの学生が実施しているのは国試の過去問を解き、解説を読むことで自分の知識を固めていく事であろう。
過去問を解くにあたっても問題数が膨大であるため、ただ闇雲に行うのではなく、まずは科目ごとに解いていく→2周目は科目をランダムにして解いてみる→最後に間違えた問題を復習する、などの自分に合った効率的な解き方をしていく必要がある。
臨床実習・OSCE
②の項でも少し述べたが、臨床実習やOSCEの練習は座学と異なり、実際に手や体を動かして学ぶ機会であるため実習前に予習をしておくと、知識が頭に残りやすい。このように実習は知識定着の手段としても重要であるが、最近の医師国家試験は非常に実習を重視した問題を出題しているため、そういった点でも実習は国試において大きな意味を持つ。
例えば検査器具の写真や、清潔操作の方法、手技の際の手袋の外し方なども出題されている。これらの事項は座学で一つ一つ学んでいくよりも、実習を真剣に取り組んでいれば解ける類の問題として出題されているため、国試対策として実習には積極的に取り組み、様々な経験を積んでおくべきである。
その他
5年次の終わりから6年次の国試直前にかけて、各予備校が医師国家試験模試を開催している。自分の力試しに受けるのも良いが、全く勉強が間に合ってないのに模試ばかり受けるのは模試の復習や基本の国試の勉強が重なり手が回らなくなる可能性もある。
そのため模試の受験は自分の勉強の進み具合と相談し、時間的に厳しいようであれば現役生の多くが受けている模試のみを受けるに留める程度で良いと思われる。医師国家試験の合否は主に相対評価で決まるため、周囲の受験生と大きく異なる勉強はしない、という事が大切である。
[1]「日本の医学教育の現状と医師国家試験」、中谷晴昭、2015年