【国家試験 総評】第118回医師国家試験解説

118回 医師国家試験 総評

 

医師国家試験の施行について┃厚生労働省

はじめに

総合

第118回医師国家試験の全体的な難易度は、前回第117回に比べるとやや易化した印象だが、第116回以前と比較すると同程度かやや難化といえる。

必須問題解説

必修問題に関しては、CBTと同レベル帯の問題が多く出題され【例年通り】の難易度だったと考えられる。しかし実臨床に即した問題が多く出題されるという傾向はより強まっており、3点問題においてもOSCEで行う内容に近い問題が出題されるなど、病院実習の大切さがますます再確認されるブロックであった。

一般問題解説

一般問題においては、必修問題と同じく実臨床を意識した問題が増加しているものの、全体として難易度は【例年通り】であったと考えられる。

現場を意識した問題に加えて、以前の国試で臨床問題として問われた知識が、一般問題となって再出題されている様な印象を受けるため、しっかりと国試の過去問を勉強しておくことが肝要である。

臨床問題解説

臨床問題については、受験生のほとんどが得点できる基本的な問題が前回第117回に比べて増えたように思われる。基本的な問題と、難易度の高いいわゆる「割れ問」の間となるやや難しい問題が減り、基本的な問題が数を増やしている印象である。

割れ問も専門医によっては意見が分かれる悪問というわけではなく、しっかりと隅々まで教科書を勉強していれば解ける問題がほとんどであり、多くの受験生が手薄になりがちな分野を狙ってきている問題という印象であった。

 

加えて、そのような多くの受験生が覚えていないであろう知識をその場で考えさせるような問題も見受けられ、思考力も問われるようになっている。

臨床問題における得点しやすさという意味では基礎問題が増えた分【やや易化】と考えられるが、相対的評価で合否の決まる国試における合格点の取りやすさという意味では基本に忠実な問題が増えた分、ミスが許されない状況であったと考えられる。

必修問題解説

内科・外科【例年通り

第118回から必修問題の出題ガイドラインに新たに疾患が加わっていたが、以前より一般臨床問題で出題されていた有名疾患ばかりであり、必修における影響はほぼ無かったといえる。しかし鼻咽頭ぬぐい液採取の際の手順(E07)や、虫垂炎に対する検査前の診察方法(E36)など、OSCEで行った事の復習の様な問題も見られた。

 

マイナー・産婦人科・小児科【例年通り

双極性障害が臨床問題(E43,44)になるなど、必修におけるマイナーでも押さえておかなければならない知識は多いが、必修でのマイナー・産婦人科・小児科の問題数は少ない。今年もその傾向は変わらず、一般臨床の勉強をしていれば解ける問題が多かったと思われる。しかし産婦人科は必修でも禁忌肢に気を付ける必要がある。(E31など)

 

公衆衛生【例年通り

職種による採血の可否(B01)や、共同意思決定(E13)など、あまり過去問では見ない問題も散見されたがそこまで難問という訳では無く、他の問題は過去問のマイナーチェンジをした様な問題が出題されており、例年通り公衆衛生は過去問をしっかりとやり込むことで対処可能であった。

一般・臨床問題解説

内科・外科【例年通り~やや易化

横隔膜弛緩症(A21)や、の腹腔内圧のモニター部位(C68)、心不全に対するSGLT2阻害薬投与(D32)、抗菌薬の投与量を決定させる問題(F68)など多くの学生にとって初見であろう知識が問われる問題もあり、今後の勉強必要量の増加を予感させる。しかし比較的これらの問題も解きやすく作られており、むしろ過去問で何度も出題されていたメジャーな疾患を問う基本的な問題が増えており、総じて点数は昨年よりは得点しやすくなっている。必修と同じく、実臨床を意識した問題が増えているのも注目しておかなければならない。A39の薬剤を飲み込んでしまった高齢者の問題などは非常に臨床的であるといえる。なお第118回医師国家試験から、今までの国試では「ステロイド」と記載されていた治療薬が一部「グルココルチコイド」と記載されているため、注意が必要である。

 

マイナー【例年通り

耳下腺腫瘍の鑑別(A33)や前立腺癌の治療(D14)など、マイナーでも難易度の高い問題は散見された。しかし、マイナーは全体として例年通りの過去問を押さえておけば問題なく解ける問題が多かった印象である。

 

産婦人科・小児科【例年通り

産婦人科・小児科においても特段新しい知識を要求される問題はあまり見受けられなかったが、分娩経過の読解(F18)など、しっかりと勉強していない学生を振り落とすタイプの問題が出題される傾向にあるのは例年と変わらずである。過去問や教科書をしっかりとやっておくと得点源につながるのも例年通りであった。

 

公衆衛生【やや難化~例年通り

摂取カロリーの問題(C28)、統計手法に関する問題(F23)、SDGsに関する問題(F28)など今までに無い問題が出題され、焦った受験者もいると思われるが、そういった難問以外の問題は過去問のマイナーチェンジのような問題であり、得点すべき問題が多かった。一方で、過去問の暗記だけでは新傾向の問題が出た際に太刀打ちできないのも公衆衛生であり、上記のような難問が出てきている事を考えると今後は隅々までしっかりと記憶していく勉強が必要となってくると思われる。