【医学部で学ぶということ】臨床実習:脳外科

 

1週間の脳外科実習が終わりました。

 

脳外科では患者の診察はなく、ほとんどが手術や検査の見学でした。

手術を見学したのは初めてだったのですが、非常に長時間であることに驚きました。朝の8時から手術開始なのですが、通常の手術でも6時間程度かかり、長い手術では10時間以上に及びます。

長い手術は珍しいものではなく、僕が実習していた期間の手術では3割くらいが10時間前後の手術でした。その間執刀している医師は昼食はもちろん、トイレにすら行きません。ものすごい集中力です。サポートをする看護師も同じで、しかも立ちっぱなしのため非常にハードです。

 

手術に時間がかかる理由はいくつかありますが、手術部位が大きい、手順が多い、検査を行いながら手術を進める必要がある、血管が多い部位は少し切っては止血を繰り返す必要がある、などが挙げられます。

脳は血管も多く、細胞ひとつひとつの重要度が他の部位に比べて高いため、慎重に進める必要があります。検査をはさむ手術も多いため、長時間になりやすいのです。

 

手術室では、清潔状態を保つために、5分程度かけて念入りに手洗いした上で、手袋、帽子、滅菌ガウンを身に着けます。(執刀医が手術室の外に出て帰ってくる時には、こうした作業をやり直す必要があって時間がかかるため、極力トイレにもいかないようにしているのです。)手術器具や患者の体も十分に消毒されます。

 

学生はよく、触れてはいけない清潔エリアに不用意に近づいて注意されます。ここまで清潔状態にこだわるのは感染症を防ぐためです。

 

人体のうちで外に触れている皮膚や、食べ物が入ってくる消化管などは菌の侵入を防いだり、撃退する仕組みが充実しています。もしこの防衛線を破って菌が侵入してきた場合は白血球がこれと戦いますが、その時には人体にもダメージを与えてしまいます。この反応を炎症といいます。

炎症が深部に達して腹腔や脳などで起これば、腹腔炎や脳炎となり致命的となりえます。手術では脳や腹部を開けるので、感染対策をしなければ、本来菌が入り込まない人体の深部に簡単に菌が入りこんでしまうのです。

実際に昔衛生環境が悪かった時には、手術による感染症で多くの患者が亡くなりました。現在でも途上国の病院は衛生環境が悪いところがあります。

 

今週は耳鼻科を回ります。耳鼻科も、大学病院に送られてくるような症例では手術がメインです。長時間の立ちっぱなしは大変ですが、しっかり見学したいと思います。

 

 

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