【CES医師国試たとえシリーズ②】ショックの4分類を「街の物流停止」で攻略|心原性・敗血症性・循環血液量減少性・閉塞性の鑑別と初期対応
「ショックの4分類、名前は言えるのに問題になると選べない」——医師国家試験の受験生から最も多く聞く悩みのひとつです。心原性・血液分布異常性・循環血液量減少性・閉塞性。丸暗記した表を思い出そうとして、全身血管抵抗(SVR)が上がるのか下がるのか、中心静脈圧(CVP)はどっちだったか、試験本番で手が止まる。この現象には明確な理由があります。血行動態を「数値の組み合わせ」として覚えているからです。
本記事では、全身循環を「街の物流ネットワーク」に見立てて、4種類のショックを「どこで物流が止まっているか」という1つの問いに還元します。この視点を入れると、血圧・SVR・CVP・心拍出量の4項目は暗記対象ではなく論理的に導出できる帰結に変わります。初期対応・輸液・昇圧薬の選択まで一本の線でつながり、最後の確認テスト5問で定着を確認できる構成です。
① ショックは「ポンプ(心臓)」「荷物の量(循環血液量)」「道路の広さ(血管抵抗)」「輸送路の通行止め(閉塞)」のどこが壊れたかで4分類できる。
② 鑑別は全身血管抵抗(SVR)と中心静脈圧(CVP)の2軸だけで決まる。SVR低下=血液分布異常性、CVP上昇=心原性か閉塞性、CVP低下+SVR上昇=循環血液量減少性。
③ 治療は「壊れた場所を直す」が原則。輸液が正解なのは循環血液量減少性と敗血症性、閉塞性は原因解除が最優先、心原性への大量輸液は禁忌に近い。
- なぜショックの分類は覚えても解けないのか
- 全身循環=街の物流ネットワークに置き換える
- 2軸で仕分ける:4種類のショックの位置づけ
- 血行動態パラメータ比較表(血圧・SVR・CVP・心拍出量)
- 4種類のショック:物流ストーリーと国試ポイント
- 初期対応の共通アルゴリズム
- 輸液と昇圧薬の使い分け
- 国試で狙われる引っかけポイント
- 確認テスト(全5問・解説付き)
- よくある質問(FAQ)
ショックの定義は「組織への酸素供給が需要に対して不足し、細胞レベルの代謝障害をきたした状態」です。ここで重要なのは、ショック=低血圧ではないという点。血圧が保たれていても組織灌流が破綻していればショックであり、逆に慢性的に血圧が低いだけの人はショックではありません。国試ではこの「血圧正常でもショック寸前」のパターンが繰り返し問われます。
では、なぜ分類が使えないのか。多くの受験生はショックの病態を表のように丸暗記します。しかし、丸暗記することで因果関係が見いだせず、1つ思い出せないと連鎖的に崩壊します。必要なのは「なぜその数値になるのか」を1つの物語で説明できる構造です。そこで登場するのが物流ネットワークの比喩です。
全身の酸素運搬を、ある街の宅配システムだと考えてください。配送センターがトラックに荷物を積み、道路を通って各家庭(末梢組織)に酸素を届け、空のトラックが倉庫に戻ってくる。この循環が滞ることがショックです。対応関係は次の通りです。
| 物流ネットワーク | 生体での対応 | 指標 |
|---|---|---|
| 配送センターのトラック | 心臓のポンプ機能 | 心拍出量(CO) |
| トラックに積む荷物の総量 | 循環血液量 | 前負荷 |
| 道路の広さ・料金所の絞り | 末梢血管の収縮・拡張 | 全身血管抵抗(SVR) |
| センター手前の入庫待ち渋滞 | 右心系への静脈還流のうっ滞 | 中心静脈圧(CVP) |
| 実際に届いた荷物の量 | 組織への酸素供給 | 乳酸値・尿量・意識レベル |
押さえどころ:血圧は「道路を流れる圧力」であり、血圧=心拍出量 × 全身血管抵抗で決まります。荷物の流量(CO)が減っても、道路を細くして圧を保てば(SVR↑)血圧は維持される。これが代償機構=ショックの初期に血圧が保たれる理由です。国試の「血圧正常なのにショック寸前の状態」はここを問うています。
4分類は、「道路が広がっているか(SVR)」と「センター手前が渋滞しているか(CVP)」の2つの質問で完全に分かれます。
質問①:道路が異常に広がっている(SVR低下・末梢が温かい)か?
→ YES なら血液分布異常性ショック(敗血症性・アナフィラキシー・神経原性)で確定。ここで分岐が終わります。
質問②:質問①でSVR上昇・末梢が冷たい場合→センター手前が渋滞している(=CVP・頸静脈怒張)か?
→ 渋滞あり(CVP↑・頸静脈怒張):心原性ショック または 閉塞性ショック
→ 渋滞なし(CVP↓・頸静脈虚脱):循環血液量減少性ショック
CVP上昇組をさらに分けるのは「センター自体が壊れたのか(心原性)、センターは無事で出入口が塞がれたのか(閉塞性)」という問いです。心エコーで左室の動きが悪ければ心原性、左室は元気なのに心嚢液貯留・右室拡大・胸腔内圧上昇などの所見があれば閉塞性、という判別に直結します。
| 分類 | 血圧 | 心拍出量 | SVR | CVP | 四肢 | 代表疾患 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 循環血液量減少性 | ↓ | ↓ | ↑ | ↓ | 冷・湿 | 出血、外傷、広範囲熱傷、重症下痢・嘔吐 |
| 心原性 | ↓ | ↓ | ↑ | ↑ | 冷・湿 | 急性心筋梗塞、劇症型心筋炎、重症弁膜症、致死的不整脈 |
| 閉塞性 | ↓ | ↓ | ↑ | ↑ | 冷・湿 | 心タンポナーデ、緊張性気胸、急性肺血栓塞栓症 |
| 血液分布異常性 | ↓ | ↑〜正常 | ↓ | ↓ | 温・乾 | 敗血症、アナフィラキシー、脊髄損傷(神経原性) |
表の注意点(ここが差のつくところ)
・敗血症性ショックが「温かい」のは代償が効いている時期(warm shock)で、進行すると心拍出量も低下し四肢は冷たくなります(cold shock)。「敗血症=必ず四肢が温かい」ではありません。
・神経原性ショックは血液分布異常性に属しますが、交感神経遮断のため徐脈を伴うのが特徴です。他のショックが頻脈を示すのと対照的で、国試の頻出識別点です。
・心原性では肺動脈楔入圧(PCWP)も上昇し、肺うっ血・起坐呼吸をきたします。閉塞性のうち心タンポナーデ・緊張性気胸ではPCWPは上がらない点が鑑別に使えます。
分類が何であれ、最初の数分でやることは共通です。国試の症例問題でも「まず行うべき処置」を問う設問はこの順序に従います。
STEP 1:気道確保と酸素投与。意識・呼吸様式を同時に評価。
STEP 2:モニタ装着(心電図・SpO₂・血圧)、太い静脈路を2本確保。同時に採血(血算・生化学・凝固・血液ガス・乳酸・血液型/交差適合)。
STEP 3:心音、呼吸音を始め四肢の温度・湿潤、頸静脈の所見でSVR, CVPの上下について分類を行う。ベッドサイドで心エコー・FAST・胸部X線を追加。
STEP 4:閉塞性が疑われれば直ちに閉塞解除(心嚢穿刺・胸腔穿刺)。それ以外は輸液反応性を評価しながら輸液を開始。
STEP 5:輸液で目標血圧に達しなければ昇圧薬を追加し、並行して原因治療(止血・再灌流・抗菌薬・アドレナリン筋注)へ。
| 分類 | 輸液の位置づけ | 主に用いる薬剤 | 最優先事項 |
|---|---|---|---|
| 循環血液量減少性 | 治療の中心(晶質液急速投与) | 輸血(大量出血時)、昇圧薬は補助的 | 出血源の制御・止血 |
| 心原性 | 慎重投与(大量輸液は禁忌に近い) | ドブタミン、ノルアドレナリン、機械的補助 | 再灌流療法など原因治療 |
| 閉塞性 | つなぎ(根本解決にならない) | 昇圧薬は時間稼ぎ、肺塞栓では抗凝固・血栓溶解 | 閉塞の物理的解除 |
| 敗血症性 | 治療の中心(晶質液急速投与) | ノルアドレナリン(第一選択)、抗菌薬 | 抗菌薬投与と感染源コントロール |
| アナフィラキシー | 併用(血管内脱水の補正) | アドレナリン筋注(第一選択) | 原因物質の除去・気道確保 |
昇圧薬・強心薬を物流で理解する
ノルアドレナリン:α₁作用が主体で、広がりすぎた道路を絞り直す薬。敗血症性ショックをはじめ血液分布異常性の第一選択。
ドブタミン:β₁作用が主体で、止まりかけたエンジンを回す薬。心原性ショックで心拍出量が低下している場面に用いる。末梢血管は拡張しうるため血圧低下に注意。
アドレナリン:α・β両方に作用。アナフィラキシーの第一選択(筋注)であり、心停止時にも静脈注射で用いる。
ドパミン:用量依存的に作用が変わるが、頻脈性不整脈の発生が多く、現在の敗血症性ショックでは第一選択としない点が問われます。
①「血圧が正常だからショックではない」→ 誤り。代償期には血圧が保たれます。頻脈・脈圧低下・末梢冷感・尿量減少・乳酸上昇を拾えるかが勝負です。
②「ショックだからまず大量輸液」→ 心原性では肺水腫を招きます。頸静脈怒張と肺ラ音があれば立ち止まってください。
③「頸静脈怒張=心不全」→ 心タンポナーデ・緊張性気胸・肺塞栓でも生じます。CVP上昇組を心原性、閉塞性の2つに分類する意識を持ちましょう。
④「ショックはすべて頻脈」→ 神経原性ショックは徐脈。またβ遮断薬内服中・ペースメーカ植込み患者では頻脈が出ないことがあります。
⑤「緊張性気胸はまず胸部X線」→ 誤り。診断は身体所見で行い、疑わしい場合は画像検査を待たずに脱気します。「まず行うべきは」という問い方に反応してください。
解答・解説は折りたたんであります。まず自分の答えを決めてから「▼ 解答・解説を見る」をクリック(タップ)して確認してください。
ショックの4分類は、「荷物が足りない」「エンジンが壊れた」「道が塞がった」「道が広がりすぎた」という4つの物流障害に対応します。この物語が頭にあれば、SVRとCVPの矢印は思い出すものではなく、その場で導けるものになります。そして治療方針も「壊れた場所を直す」という一貫した原則から演繹できます。
臨床問題で問われているのは知識の量ではなく、目の前の所見からどの障害点を推定するかという思考の筋道です。同じ考え方は呼吸不全、酸塩基平衡、意識障害の鑑別にも応用できます。次に問題を解くときは、答えを選ぶ前に「この患者は物流のどこで止まっているか」を一言で言語化してみてください。
本記事の土台となる思考法。症例文から鑑別を絞り込む手順を5段階に分解して解説しています。
医師国家試験|一般・臨床・必修の読み方は「3つの思考」を使い分けて対策
問題形式ごとに読み方を切り替える方法。ショック問題が必修で出た場合の判断基準も整理できます。
医師国家試験 禁忌肢対策完全ガイド|不合格を避ける3原則と勉強法
ショック対応は禁忌肢が仕込まれやすい領域。「落とさない力」の鍛え方を解説しています。
医師国家試験の過去問勉強法|いつから何周で合格ライン?6年生の周回ロードマップ
本記事のような「症候別の再整理」を、過去問演習のどの段階で行うべきかが分かります。
【第121回対策】医師国試ブループリント完全ガイド|119・120回の傾向から読み解く5つの対策
複数の病態が絡む複合臨床問題の増加傾向と、出題基準を踏まえた対策の方向性を解説。
模試の結果から弱点分野を特定する方法。救急・循環器の取りこぼしを可視化する視点も紹介。
CES医師国試予備校は、医学部入学前のリメディアルから進級・卒業試験、CBT・OSCE、医師国家試験、海外医学部対応、USMLEまでを一貫して支える完全マンツーマン指導の予備校です。1コマ90分、対面・オンラインの両方に対応しています。
国試合格を目指すメインコース。学習の全体像を可視化する年間カリキュラムを個別に作成し、弱点分野を優先順位づけして対策します。既卒生の学習再構築にも対応。
4年次の関門であるCBT・OSCEを知識面と実践面の両方から対策。知識同士の関連づけを重視し、暗記量そのものを減らす指導を行います。
国公立・私立を問わず、大学ごとの進級試験傾向を踏まえた個別指導。前学年までの復習が必要な場合も学年の壁を気にせず対応します。
日本の医師国家試験・卒試・進級試験と両立しながらUSMLE合格を目指す専門コース。ケースベース演習で臨床推論力を鍛えます。
このほか、入学前リメディアル、海外医学部進級対策、海外医学部卒業生向けの日本医師国試対策コースもご用意しています。詳細はCES医師国試予備校 公式サイトをご覧ください。
CES医師国試予備校では、暗記に頼らず「なぜそうなるのか」を自分の言葉で説明できる状態を目指した個別指導を行っています。既卒生・再受験生の学習設計、必修対策、模試の伸び悩みなど、現在の状況に合わせた学習相談を受け付けています。まずはお気軽にご連絡ください。
お電話でのお問い合わせ
0120-406-707
092-406-7099
Q. ショックの4分類は必ず4つに割り切れますか?
実際の患者では複数の要素が混在します。たとえば重症敗血症では血管拡張に加えて心筋抑制が起こり、心原性の要素が重なります。国試では典型例が出題されますが、「複合しうる」という理解があると、所見が教科書通りでない症例問題にも対応できます。
Q. 四肢が温かいか冷たいかは、実際の問題文で判断材料になりますか?
なります。「四肢は温かく乾燥している」という記述があれば血液分布異常性を強く示唆し、「四肢冷感、冷汗」とあればそれ以外の3分類に絞られます。問題文の身体所見の一文が分類そのものを指定していることが多いので、読み飛ばさないでください。
Q. 敗血症性ショックで輸液をするのに、なぜ中心静脈圧は低いのですか?
血管が拡張し血管透過性も亢進しているため、血管という「容れ物」が大きくなり、中身が血管外へ漏れ出しているからです。絶対的な水分量ではなく、容れ物に対して中身が相対的に不足している状態(相対的循環血液量減少)と理解すると、輸液が必要な理由と昇圧薬で血管を絞る理由の両方が説明できます。
Q. 心原性ショックでは輸液は絶対にしてはいけないのですか?
絶対禁忌ではありません。右室梗塞では前負荷への依存度が高く、輸液で心拍出量が改善する場面があります。禁忌に近いのは「肺うっ血がある状態での大量急速輸液」です。頸静脈怒張と肺ラ音を確認したうえで判断する、と整理しておくと選択肢を迷いません。
Q. 神経原性ショックはどの分類に入りますか?
血液分布異常性ショックに分類されます。頸髄・上位胸髄の損傷で交感神経が遮断され、血管が拡張して血圧が低下します。他のショックと異なり徐脈を伴い、皮膚は温かく乾燥しているのが特徴です。外傷患者で「低血圧+徐脈」を見たら想起してください。
Q. 「アナフィラキシーショック」という用語は今も使いますか?
日本アレルギー学会の2022年改訂ガイドラインでは、ショックの有無にかかわらず重篤になりうることや国際基準との整合を理由に、中心概念が「アナフィラキシー」に統一されました。一方、ショックの4分類を扱う文脈では血液分布異常性ショックの代表例として従来どおり扱われます。用語の位置づけが変わった点を知っておくと、記述の揺れに戸惑わずに済みます。
・日本集中治療医学会/日本救急医学会「日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024)」
https://www.jsicm.org/pdf/cq/J-SSCG2024/J-SSCG2024_Main.pdf
・日本救急医学会「J-SSCG2024 初期治療とケアバンドル」
https://www.jaam.jp/info/2024/files/bundle.pdf
・日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」
https://www.jsaweb.jp/uploads/files/Web_AnaGL_2023_0301.pdf
・日本アレルギー学会「アナフィラキシー」解説ページ
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=7
・厚生労働省「医師国家試験」および「医師国家試験出題基準(ガイドライン)」(厚生労働省ウェブサイト内の資格・試験情報ページを参照)
東大医学部卒講師(現役医師)
略歴:
PMD医学部専門予備校およびCES医師国家試験予備校で講師として指導中。
医学教育・国試対策に関する豊富な実務経験をもとに監修・執筆を担当。
運営 CES医師国試予備校(株式会社アクト)
〒810-0041 福岡市中央区大名2-11-25 新栄ビル6F(地下鉄赤坂駅より徒歩2分)/TEL 0120-406-707・092-406-7099
※本記事は医師国家試験対策の学習を目的とした教育コンテンツです。実際の診療における判断は最新のガイドラインおよび各施設の方針に従ってください。
