【CES医師国試たとえシリーズ⑨】救急初療を「ABCDEの点検チェックリスト」で攻略|JRC蘇生アルゴリズムの整理

救急初療は、医師国家試験で「知識はあるのに順序を間違えて失点する」典型的な領域です。個々の処置は知っている。気管挿管も、除細動も、アドレナリンも説明できる。それなのに「まず行うべき処置はどれか」と問われると、なぜか目立つ選択肢に手が伸びてしまう。

この問題を解決する最良のモデルが、飛行機の離陸前点検(プリフライトチェック)です。何万時間も飛んだベテランパイロットでも、離陸前には必ずチェックリストを声に出して確認します。慣れているから省略する、ではなく慣れているからこそ順序を固定する。救急のABCDEアプローチとJRC蘇生アルゴリズムは、まさにこの思想で設計されています。本記事では点検リストの比喩を軸に、ABCDE・BLS・ACLSを一本の線でつなぎます。フローチャートと確認テスト5問(解答は折りたたみ式)付きです。

この記事の結論(3行まとめ)

① ABCDEは覚える語呂ではなく「上流が片付くまで下流に進まない」という強制順序。気道が確保できていない患者に優先的に静脈路を取ることは優先順位が落ちます。

② 心停止では「ショック適応か否か」の二択がすべての分岐点です。VF・無脈性VTなら除細動、PEA・心静止なら胸骨圧迫とアドレナリンを継続しつつ原因を探します。

③ 蘇生の質を決めるのは「絶え間ない胸骨圧迫」と「早期の除細動」。電気ショックの直後は脈を確認せず、ただちに圧迫を再開します。

目次
  1. なぜチェックリストなのか
  2. ABCDE:5つの点検項目
  3. BLS:一次救命処置のフローチャート
  4. 胸骨圧迫の質を決める要素
  5. ACLS:心停止アルゴリズム
  6. 可逆的な原因を探す
  7. ROSC後(自己心拍再開後)の管理
  8. 小児・乳児での違い
  9. 国試で狙われる引っかけポイント
  10. 確認テスト(全5問・解答は折りたたみ)
  11. よくある質問(FAQ)

1. なぜチェックリストなのか

航空業界では、離陸前に必ず決められた順序で点検を行います。ベテランであっても省略しません。理由は明快で、人間は緊張下で必ず何かを飛ばすからです。しかも飛ばすのは「当たり前すぎて意識に上らない項目」であり、それが往々にして最も致命的な項目でもあります。

救急の現場もこれと同じ構造を持ちます。目の前に派手な外傷があれば誰でもそこに目が行きがちです。しかし、見た目の派手さと生命への危険度は必ずしも一致しません。外傷に目を奪われている間に気道閉塞を見逃したり、呼吸不全やショックへの対応が遅れたりすれば、患者の生命に直結します。。ABCDEアプローチとは、こうした人間の「目立つものから見てしまう」という性質を前提に、生命を脅かす異常を優先順位どおりに探し、処置するために設けられた強制的な診療順序です。。

国試での意味:「まず行うべき処置はどれか」という設問は、まさにこのチェックリストの順序を試しています。選択肢には必ず「いずれ必要になるが、今ではない処置」が混ぜてあり、そこに引っかかるかどうかで差がつきます。診断の精緻さではなく、順序を守れるかが問われているのだと理解してください。

2. ABCDE:5つの点検項目
項目 機体での対応 評価する内容 異常時の介入
A
Airway
空気の取り入れ口 発声できるか、いびき様の音、シーソー呼吸、嗄声、口腔内の異物・出血 頭部後屈あご先挙上(外傷では下顎挙上と頸椎保護)、吸引、エアウェイ、気管挿管
B
Breathing
エンジンへの酸素供給 呼吸数、SpO₂、胸郭の動きの左右差、呼吸音、打診音、頸静脈、気管偏位 酸素投与、補助換気。緊張性気胸なら画像を待たず胸腔穿刺による緊急減圧
C
Circulation
燃料の配送網 脈拍、血圧、皮膚の色調・温度・湿潤、毛細血管再充満時間、活動性出血 圧迫止血、太い静脈路確保、輸液・輸血、FASTや心エコー
D
Disability
操縦系統 意識レベル(JCS・GCS)、瞳孔の大きさと対光反射、麻痺の有無 必ず血糖測定を行う(低血糖の見逃しは致命的であり、なおかつ早急に補正可能)
E
Exposure
機体外観の全周点検 衣服を脱がせ全身を観察、背面の確認、体温測定 観察後は直ちに保温(低体温は凝固障害を招く)

順序が「強制」である理由

気道が閉塞していれば、どれだけ高濃度の酸素を流しても肺には届きません。呼吸が破綻していれば、血液が巡っても酸素は運ばれません。下流の項目は、上流が機能して初めて意味を持つ——これが順序の根拠です。

したがって、Aに生命を脅かす異常があれば、まずAに介入し、少なくとも次の段階へ進める状態にしてからBへ進みます。
同じように、Bに異常があればBを処置してからCへ進みます。。そしてどこかで介入したら、必ずAに戻って再評価します。点検は一度きりではなく、状態が変わるたびに繰り返すものです。

3. BLS:一次救命処置のフローチャート

STEP 1 安全の確認

自分の安全を最優先。救助者が倒れれば助けられる人がいなくなります。

▼

STEP 2 反応の確認

肩を軽くたたきながら大声で呼びかけます。

▼

STEP 3 応援を呼び、AEDを手配する

反応がなければ直ちに大声で助けを求め、救急通報とAEDの手配を依頼します。一人で抱え込まないようにしましょう。この段階を後回しにすると除細動が遅れます。

▼

STEP 4 呼吸と脈の確認(10秒以内)

普段どおりの呼吸があるかを見ます。しゃくり上げるような不規則な呼吸(死戦期呼吸)は「呼吸なし」と判断してください。判断に迷う場合も心停止として対応します。

▼

STEP 5 胸骨圧迫を開始する

胸骨の下半分を、強く・速く・絶え間なく圧迫します。人工呼吸の技術があれば30回の圧迫と2回の換気を繰り返します。

▼

STEP 6 AEDが到着したら装着し、解析に従う

パッドは適切な位置の素肌に貼付します。解析中は患者に触れないようにしましょう。ショックが必要と判定されれば通電し、通電直後は脈を確認せず、ただちに胸骨圧迫を再開します。

▼

STEP 7 2分ごとにリズム確認、救助者は交代する

胸骨圧迫の質は疲労とともに急速に低下します。交代は5秒以内で。ALSチームに引き継ぐまで、あるいは患者が動き出し正常な呼吸が戻るまで継続します。

4. 胸骨圧迫の質を決める要素

① 十分な深さ 成人ではおよそ5cm(深すぎる圧迫も避ける)です。浅い圧迫では血液が送り出されません。

② 適切なテンポ 1分間に100〜120回のリズムで圧迫を行います。速すぎると心臓が血液で十分に満たされる前に次の圧迫が来てしまいます。

③ 完全な圧迫解除 押した後は胸壁が元の位置まで戻るのを待ちます。もたれかかったままでは心臓に血液が戻りません。「押すこと」と同じくらい「戻すこと」が重要です。

④ 中断を最小限に 圧迫を止めるたびに冠血流はゼロに近づき、再開しても回復に時間がかかります。解析や通電の前後も中断を短くするようにしましょう。

⑤ 過換気を避ける 過剰な人工呼吸は胸腔内圧を上げて静脈還流を妨げ、かえって循環を悪化させます。

胸骨圧迫は「ためらわない」ことが最優先:肋骨骨折などの合併症を恐れて圧迫をためらう、あるいは中断することは、患者の救命機会を失わせます。心停止でない人に胸骨圧迫を行ってしまった場合の害よりも、心停止の人に行わなかった場合の害のほうが圧倒的に大きい——この非対称性が、「判断に迷えば圧迫する」という原則の根拠です。

5. ACLS:心停止アルゴリズム

BLSでは自己心拍が再開しない場合、二次救命処置へ進みます。ここでの最大の分岐点は「心電図波形が電気ショックの適応かどうか」——この二択だけです。

分類 波形 状態のイメージ 対応
ショック適応 心室細動(VF)
無脈性心室頻拍(無脈性VT)
電気系統が暴走している。止めればリセットできる可能性がある ただちに電気ショック → 直後にCPR再開
ショック非適応 無脈性電気活動(PEA)
心静止(asystole)
暴走ではなく、そもそも動いていない。止めるべきものがない CPRを継続し、アドレナリンを早期に投与しつつ原因を検索

共通の土台 質の高いCPRを絶やさない

以下のどの経路をたどっても、胸骨圧迫を絶やさないことが前提です。並行してモニター装着、静脈路(または骨髄路)確保、高度な気道確保を進めます。

▼ リズムチェック

【ショック適応】VF・無脈性VT

① ただちに電気ショック → ② 脈を確認せず直後にCPRを2分間 → ③ リズムチェック

改善しなければショックを繰り返し、アドレナリンを3〜5分ごとに投与。難治性であれば抗不整脈薬(アミオダロンなど)を検討します。

/

【ショック非適応】PEA・心静止

① CPRを継続 → ② アドレナリンをできるだけ早期に投与し、以後3〜5分ごと → ③ 2分ごとにリズムチェック

電気ショックの適応はありません。この経路では可逆的な原因の検索と治療が予後を左右します。

▼

自己心拍再開(ROSC)

脈が触知でき、波形表示型の呼気CO₂モニターで急激な数値上昇を認めるなどのサインが得られたら、ROSC後の集中管理へ移行します。

波形表示型呼気CO₂モニターの3つの役割:①気管挿管が正しく行われたことの確認、②胸骨圧迫の質の評価(数値が低ければ圧迫が不十分)、③ROSCの早期覚知(急激な上昇)。単なる補助器具ではなく、蘇生の質を客観的に可視化する装置として位置づけられています。

アドレナリンのタイミング:ショック非適応の波形ではできるだけ早く、ショック適応の波形では数回のショックで改善しない段階から投与を開始し、以後3〜5分ごとに繰り返します。「非適応こそ早く」という非対称性が問われます。

6. 可逆的な原因を探す

心停止のなかには、原因を取り除かなければ何度蘇生しても戻らないものがあります。頭文字がHとTで始まる項目として整理され、CPRと並行して検索します。

Hで始まる原因 対応 Tで始まる原因 対応
低酸素血症 気道確保と酸素化 緊張性気胸 胸腔穿刺による脱気
循環血液量減少 輸液・輸血、止血 心タンポナーデ 心嚢穿刺
アシドーシス 換気の適正化、原因治療 中毒 原因物質に応じた解毒・除去
カリウム異常(高値・低値) 電解質の補正 血栓症(冠動脈・肺動脈) 再灌流療法、血栓溶解の検討
低体温 復温。十分に温まるまで蘇生を続ける 外傷 大量出血などを迅速に検索し、原因を治療
低血糖 血糖測定を忘れない 心筋梗塞 PCIなどの緊急再灌流療法

低体温は特別扱い:偶発性低体温症では、体温低下によって全身の代謝、特に脳の酸素消費量が低下します。そのため、低体温下では不可逆的な脳障害が予想される状況でも神経学的に良好な転帰が得られることがあります。
低体温患者では脈拍や呼吸が極めて弱く、生命徴候が確認しにくい場合でも、十分に復温して蘇生を行う前に死亡と判断してはいけません。

7. ROSC後(自己心拍再開後)の管理

心拍が戻った瞬間は「無事着陸」ではなく「着陸態勢に入っただけ」です。ROSC後の数時間から数日の管理が、社会復帰できるかどうかを左右します。

① 原因の診断と治療 12誘導心電図を記録し、急性冠症候群が疑われれば緊急冠動脈造影・再灌流療法を検討します。

② 酸素化と換気の適正化 漫然とした高濃度酸素の投与も、過換気も避けます。過換気は脳血管を収縮させ、脳血流を減らすため有害です。

③ 循環の安定化 適切な血圧を維持し、臓器灌流を確保します。

④ 体温管理療法 昏睡が続く症例では、体温を管理して発熱を防ぎ、脳の二次的障害を軽減します。

⑤ 神経学的予後の評価 早すぎる時点での予後判定は避け、複数の指標を組み合わせて慎重に行います。

8. 小児・乳児での違い

心停止の原因が違う 成人の心停止は心原性が多いのに対し、小児では呼吸に起因するもの(窒息、重症呼吸不全)が多いのが特徴です。したがって気道と呼吸への介入がより重い意味を持ちます。

圧迫の深さ 胸の厚さのおよそ3分の1が目安。

圧迫の方法 乳児では2本の指、または胸郭を包み込んで両母指で圧迫する方法を用います。

圧迫と換気の比 1人で行う場合は30対2、医療従事者が2人以上で行う場合は15対2とされます。

9. 国試で狙われる引っかけポイント

①「しゃくり上げるような呼吸があるので呼吸あり」→ 誤り。死戦期呼吸は心停止のサインです。ただちに胸骨圧迫を開始します。

②「電気ショック後に脈拍を確認してから圧迫を再開」→ 誤り。通電直後は脈を確認せずただちに胸骨圧迫を再開します。確認のための中断が予後を悪化させます。

③「心静止に対して電気ショック」→ 誤り。止めるべき無秩序な電気活動がありません。CPRとアドレナリン、そして原因検索です。

④「意識障害の患者に頭部CTを最優先」→ 気道・呼吸・循環の安定が先です。そして血糖測定を忘れない。低血糖は即座に治療可能な原因です。

⑤「気道が不安定だが、まず静脈路を確保」→ 順序が逆。Aが片付くまで先に進みません。

⑥「ROSC後なので高濃度酸素を継続し、しっかり過換気にする」→ いずれも有害となりうる管理です。酸素化も換気も適正化が原則。

⑦「低体温の心停止で、蘇生を早期に中止」→ 誤り。復温するまで蘇生を継続する、という原則があります。

10. 確認テスト(全5問)

解答・解説は折りたたんであります。まず自分の答えを決めてから「▼ 解答・解説を見る」をクリック(タップ)して確認してください。

第1問

路上で成人が倒れているのを発見した。反応がなく、しゃくり上げるような不規則な呼吸を認める。最も適切な対応はどれか。

a 呼吸があるため回復体位とし経過を観察する

b 呼吸が落ち着くまで気道確保のみを行う

c 応援とAEDを要請し、ただちに胸骨圧迫を開始する

d 頸動脈を1分間かけて慎重に触知する

e 救急隊の到着を待つ

▼ 解答・解説を見る

解答:c

しゃくり上げるような不規則な呼吸は死戦期呼吸であり、心停止のサインです。「呼吸あり」と誤認して待機することが、救命のチャンスを失わせる最大の要因になります(a・bが誤り)。

脈の確認は10秒以内にとどめ、迷えば心停止として対応します(dが誤り)。救急隊を待つ間の空白がそのまま予後を悪化させるため、eも誤りです。判断に迷ったら圧迫を始める——害の非対称性がこの原則の根拠です。

第2問

成人に対する胸骨圧迫について正しいのはどれか。2つ選べ。

a 1分間に60〜80回のテンポで行う

b 圧迫のたびに胸壁が元の位置まで戻るようにする

c 中断は可能な限り短くする

d 圧迫部位は胸骨の上端である

e 十分な換気のため、圧迫を止めて時間をかけて人工呼吸を行う

▼ 解答・解説を見る

解答:b、c

圧迫解除を完全に行うことで心臓に血液が戻り、次の圧迫で送り出せます。押すことと同じくらい戻すことが重要です。また中断のたびに冠血流はゼロに近づくため、中断は最小限にします。

テンポは1分間に100〜120回(aが誤り)、圧迫部位は胸骨の下半分(dが誤り)。過剰な換気や、そのための長い中断はかえって循環を悪化させます(eが誤り)。

第3問

電気ショック(除細動)の適応となる心停止時の波形はどれか。2つ選べ。

a 心室細動

b 心静止

c 無脈性心室頻拍

d 無脈性電気活動

e 完全房室ブロック

▼ 解答・解説を見る

解答:a、c

心室細動と無脈性心室頻拍は、無秩序な電気活動が暴走している状態です。電気ショックでこれを一度リセットすれば、正常な調律が戻る可能性があります。

一方、心静止と無脈性電気活動は「暴走」ではなく「そもそも有効に動いていない」状態であり、止めるべきものが存在しないため電気ショックの適応になりません。CPRの継続、早期のアドレナリン投与、そして可逆的な原因の検索が対応となります。完全房室ブロックは心停止の4波形には含まれません。

第4問

心室細動に対して電気ショックを1回施行した。直後に行うべき対応はどれか。

a 頸動脈の拍動を確認する

b ただちに胸骨圧迫を再開する

c 12誘導心電図を記録する

d 血液ガス分析の結果を待つ

e 続けて2回目のショックを行う

▼ 解答・解説を見る

解答:b

通電に成功しても、心臓がすぐに有効な拍出を再開するとは限りません。この時期に脈の確認で時間を使うと、冠血流が途絶えた状態が延びてしまいます。したがって直後は脈を確認せず、ただちに胸骨圧迫を再開し、2分後のリズムチェックまで継続します。

「確認してから動く」ではなく「動きながら確認する」——この発想の転換が、蘇生では繰り返し問われます。a・c・dはいずれも中断を生む対応であり、eのように連続でショックを重ねるのも標準的ではありません。

第5問

交通外傷の患者が搬送された。意識レベルが低下し、吸気時にいびきのような音を認め、SpO₂は88%。血圧は保たれている。最初に行うべき対応はどれか。

a 太い静脈路を2本確保する

b 頸椎を保護しつつ気道確保を行う

c 全身CTを撮影する

d 頭部外傷の評価のため瞳孔所見をとる

e 衣服を脱がせて全身を観察する

▼ 解答・解説を見る

解答:b

いびき様の音は舌根沈下による上気道の閉塞を示唆します。ABCDEの順序に従い、Aの異常を解決するまで先に進みません。外傷例では頸椎損傷の可能性を考慮し、頭部を後屈させずに下顎挙上法で気道を開通させます。

a(C)、d(D)、e(E)はいずれも後で必ず行う項目ですが、この時点では優先されません。cのような画像検査は、生理学的な安定が得られてから検討します。選択肢に「いずれ必要だが今ではない処置」が混ぜてある——救急の設問の典型的な構造です。

まとめ:順序を守ることが、最も高度な技術である

救急初療で問われているのは、珍しい疾患の知識ではありません。気道・呼吸・循環という当たり前の項目を、当たり前に、飛ばさずに確認できるかです。パイロットがチェックリストを省略しないのと同じ理由で、経験を積んだ医師ほど順序を守ります。

心停止であればさらにシンプルで、「絶え間ない胸骨圧迫」「早期の除細動」「可逆的な原因の検索」の3つに集約されます。本シリーズで扱ってきた循環・呼吸・腎・代謝・感染症・脳卒中・心電図の知識は、すべてこの最後の局面——原因を見つけて取り除く場面——で動員されます。順序という骨格の上に、各領域の知識を載せていってください。

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よくある質問

Q. なぜABCの順序を必ず守らなければならないのですか?

下流の項目は、上流が機能して初めて意味を持つからです。気道が閉塞していれば酸素は肺に届かず、呼吸が破綻していれば血液が巡っても酸素は運ばれません。したがってAに異常があればAを解決するまで先に進まず、どこかで介入したら必ずAに戻って再評価します。

Q. 死戦期呼吸とは何ですか?

心停止直後にみられる、しゃくり上げるような不規則で効果のない呼吸様の動きです。これを「呼吸あり」と誤認して様子を見てしまうことが、救命の機会を失う大きな原因になります。死戦期呼吸は心停止のサインであり、ただちに胸骨圧迫を開始します。

Q. 一般市民も人工呼吸を行うべきですか?

人工呼吸の訓練を受けており、行う意思がある場合には胸骨圧迫と組み合わせて行います。ためらいがある場合や技術に自信がない場合は、胸骨圧迫のみを絶え間なく続けることが推奨されます。何もしないことが最も避けるべき選択です。

Q. 心静止や無脈性電気活動には除細動を行わないのはなぜですか?

電気ショックは、無秩序に暴走している電気活動を一度止めて正常な調律の再開を促す治療だからです。心静止や無脈性電気活動では止めるべき暴走が存在せず、通電しても効果がありません。これらの波形では、質の高いCPRの継続、早期のアドレナリン投与、そして可逆的な原因の検索と治療が中心となります。

Q. 電気ショックの直後に脈を確認しないのはなぜですか?

通電に成功しても心臓がすぐに有効な拍出を再開するとは限らず、確認に時間を使えばその間の冠血流が途絶えるためです。直後は脈を確認せずただちに胸骨圧迫を再開し、2分後のリズムチェックまで継続します。蘇生では中断そのものが有害である、という原則が働いています。

Q. 自己心拍が再開したあとは何をしますか?

原因の診断と治療(12誘導心電図の記録、急性冠症候群が疑われれば再灌流療法)、酸素化と換気の適正化、循環の安定化、昏睡が続く場合の体温管理療法が柱になります。高濃度酸素の漫然とした投与や過換気はいずれも有害となりうるため、「多いほどよい」という発想は取りません。

参考資料

・日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン2025」
https://www.jrc-cpr.org/jrc-guideline-2025/

・日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン2025 オンライン版」第1章 一次救命処置(BLS)
https://www.jrc-cpr.org/wp-content/uploads/2025/10/BLS2025_PC_ver1.pdf

・日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン2025 オンライン版」第2章 二次救命処置(ALS)
https://www.jrc-cpr.org/wp-content/uploads/2025/10/ALS2025_PC_ver1.pdf

・厚生労働省「医師国家試験」および「医師国家試験出題基準(ガイドライン)」(厚生労働省ウェブサイト内の資格・試験情報ページを参照)

※上記のオンライン版はパブリックコメント用として公開されたものです。具体的な数値や手順は最終版(書籍版)および最新の情報でご確認ください。

著者プロフィール

東大医学部卒講師(現役医師)

略歴:

PMD医学部専門予備校およびCES医師国家試験予備校で講師として指導中。
医学教育・国試対策に関する豊富な実務経験をもとに監修・執筆を担当。

運営 CES医師国試予備校(株式会社アクト)

〒810-0041 福岡市中央区大名2-11-25 新栄ビル6F(地下鉄赤坂駅より徒歩2分)/TEL 0120-406-707・092-406-7099

※本記事は医師国家試験対策の学習を目的とした教育コンテンツです。実際の診療における判断は最新のガイドラインおよび各施設の方針に従ってください。