CBTとOSCEで失敗しないために!医学部生のための実践ガイド
はじめに
CBT、OSCEどちらもおそらく医学部生が経験するであろう最初の大きな公的な試験であり、医者になる上で必ず通過しなければならない試験である。CBTやOSCEについての詳細な説明は厚生労働省のホームページに記載されているが、簡単に言うとCBTは臨床実習に出る際に必要な知識を確認するための試験であり、OSCEは臨床実習に出る際に必要な手技を確認するための試験である。
OSCEに関しては3~4年次に臨床実習前に行われるPre-CC OSCEと、6年次に臨床実習の後に行われるPost-CC OSCEと2種類あり、いずれも必須の試験であるが、ここでは前者を重点的に解説する。この項目では、CBTとOSCEの内容について説明したのち、それぞれの対策について説明していく。
厚生労働省:共用試験(医学)のホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27947.html
CBTについて
CBTはComputer-Based Testingの略であり、コンピューター上で行う試験である。医学部1~4年で学んだ基礎医学や臨床医学について、320問、6時間の試験を1日で解く。出題される問題はそれぞれのコンピューターによってランダムに出題され、カンニングなどへの高い安全性がある。
問題は6つのブロックに分かれており、基礎医学・臨床医学についての基本的な知識を聞いてくるブロックから始まり、最後は医師国家試験の様に、ある疾患の症例について連続で問われるブロックがある。
また、学生によって解いている問題が異なるため、一概に正答率が高い学生の方が成績が良いという訳ではない。学生によって解いている問題セットが異なり、それぞれのセットの難易度も異なるため、難易度調整が行われた上でIRT標準スコアとして、偏差値の様な形で結果が発表される。基本的にはどの大学もこの試験に合格する事が、病院の臨床実習での必須条件とされ、CBTによって進級・留年が決定する大学が殆どである。
ではその他の科目の試験の様に、CBTも合格さえできれば良いのかというと、決してその限りではない。CBTでの成績は臨床研修病院のマッチングに利用されることが多いためである。研修病院のマッチングについては下記の別記事を参照してほしい。
マッチングでは学生の成績を確認するために、大学の成績表、受験した模試の成績などが使われる事もあるが、最も広く利用されているのがこのCBTの成績であると筆者は感じている。「ブランド」病院などと呼称される臨床研修病院も、殆どの病院がCBTを学生の成績確認に利用し、加えてCBTのIRTスコアによって書類選考で落とす、いわゆる足切りに使用されているのも事実である。
そのため、CBTは最低限合格だけすれば良いと考え、成績が良くなかった場合には研修病院の選択の幅が狭まってしまう。また、医師国家試験の合格率とCBTの成績の間には非常に強い相関があるということが知られている。
そのため、CBTで勉強していない学生は国試落ちのリスクが高いといえる。そういった面から見ても、CBTの結果が医学生の4~6年において重要になってくることは明らかである。ではどのように勉強していけば良いのか、ということであるが、基本的にベースとなるのは医師国家試験と同様に、予備校での授業を取りつつ、過去問の演習を行っていく事が基本となる。
CBTも医師国家試験と同様に、CBTまでの基礎医学・臨床医学を完璧に学習している学生であれば予備校の授業は必要ないものと思われるが、多くの学生は何らかの苦手科目や勉強が間に合っていない分野があると思われる。そのため殆どの学生が予備校の授業と過去問演習を併用する。しかしながら、予備校が占めるウェートは医師国家試験ほど大きくなく、過去問演習を手厚く行っておけばある程度の点数は取れるとの声もある。
これは医師国家試験とは異なり、基礎医学が試験範囲に入っているためであろうと筆者は推測する。基礎医学は臨床医学に比べ知っておかなければならない知識の範囲が広く、また、CBTまでに行ってきた基礎医学の勉強の成績が如実に反映される範囲である、というのが理由である。
CBTにおける臨床医学は、基本的には医師国家試験では問われる細かい知識までは問われず、ある疾患についての大まかな「プロフィール」を勉強しておけば解けるものも多い。基礎医学は一つ一つの科目の範囲が広く、CBTのために1から勉強しようとすると膨大な時間がかかってしまう、というのが根底にあるように見受けられる。
そのため、もしCBTを勉強する際に基礎医学に不安がある場合は、勉強を半年前など早めに開始し、基礎医学の勉強に時間をかけ、過去問をしっかり得点できるようになることが大切である。もちろん、臨床医学も簡単という訳ではなく、覚えるべき疾患の数でいえば医師国家試験とさほど変わらないため、こちらも前もって長い時間をかけて少しずつ勉強しておく必要がある。
長くなったが、CBTの勉強の基本は
CBTの勉強の基本
- ①できるだけ早く勉強を始める
- ②自分の理解度を把握し、必要に応じて予備校の授業を利用する
- ③過去問の演習は入念に行っておく
の3本柱である。特に③過去問の演習については、「プール問題」といってCBT本番の問題であっても、過去問から体感10~15%ほど出題されるため、必ず行っておくべきである。
OSCEについて
OSCEはObjective Structured Clinical Examinationの略であり、「客観的臨床能力試験」と訳される。
この試験は採血や、問診・診察などCBTなどの試験では測れない診察・手技の技術を試験するものである。大学によって多少の時期のズレはあるが、OSCEも前述のCBTとほぼ同時期・学期に行われることが多い。そのためOSCEの対策は多かれ少なかれCBTの対策と時期が被ることになる。
しかし、結論から言ってしまうとOSCEの対策はひたすら学習用DVDと学習・評価項目を読み込み、ひたすら練習するのみである。OSCEの試験は共用試験実施評価機構が発行している学習・評価項目(医学系OSCE公開資料 | 公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構 (cato.or.jp))の範囲内から必ず出題される。
よって、約130ページあるこのテキストを読み込み、完全に実施することができれば合格は確定である。しかしながら診察の場所や順番、特に医療面接における聴取項目などは、何度も読み込むだけで実施する事は非常に難しいのではないかと思う。そこで、大学でも実習の授業があると思うが、そこで自分が理解できるまで実際に手を動かし、よく分からなかった部分はテキストと学習用DVDでしっかりと復習し、友人や家族に対して実演してみる。
そうすることで徐々に手技が身につき、試験に合格できるようになる。また、試験本番は評価機構から採点官の先生がいらっしゃり、模擬患者さんを相手に実際に手技を行うため、予想以上に緊張し、思わぬミスを犯してしまう学生も少なくない。そのようなミスを防ぐためにも、重ね重ねの練習が有効であると筆者は考えている。
OSCEはCBTと異なり、マッチングなどに使用されることは一般的に少ないが、だからと言って手を抜いてはならない。理由は2つあり、1つは臨床を行う上で重要だからである。国試に合格して研修医になり、実際に患者さん相手に診療を行うときに、頼りになるのは意外とOSCEで行った手技なのである。
OSCEをきちんと行っておくことで、患者さんにより良い診察を行う事ができる。もう1つは、手技や診察の内容が国家試験でも頻出だからである。国試に出題される手技・診察の問題は、病院での臨床実習をしっかりとこなしていれば解ける問題が少なくないが、その実習の基礎となるのはOSCEで学んだ技術である。
すなわち、3~4年生で学んだ技術がそのまま国試に出題されるため、国試対策という意味合いでもOSCEに真剣に取り組むことは重要である。病院実習が終了した後に行われるpost-CC OSCEでも復習を行うが、こちらも国試の勉強と時期的に被るため、3~4年生のうちにOSCEはしっかりと勉強しておくことをお勧めする。
[1] 「日本の医学教育の現状と医師国家試験」、日本医学教育学会・中谷晴昭、2014年