現役医師が教える医師国家試験合格のための「模試の活用法」と「戦略的学習計画の立て方」
はじめに
皆さんは自身の力を試すのは好きですか?
この記事では国試に向けた力試しである模試の活用方法を解説します。
なぜ模試を受ける必要があるのか?受けた後どのように活用するのがいいのか?どの模試を受けたらいいのか?そのような疑問を解決しましょう。
1.模試を活用するための基本ステップ
模試の重要性と役割を考える
この記事を読んでくださっている皆さんの中には、模試の役割を自分なりに考えている方も模試の必要性に納得できない方もいるでしょう。ここでは模試の役割とは何なのかを整理します。
・自身の立ち位置を知る機会
・勉強のペースメーカー、モチベーション
・本番の形式や時間配分に慣れる練習
・足りていない知識の確認・新しい知識との出会い
それぞれについて詳しく見てゆきましょう。
自身の立ち位置を知る機会
同じ年度の国試受験者たちの中で自分がどのくらいの位置にいるのかは常に気にしなければなりません。
なぜなら、医師国家試験は例年1割程度の受験者が不合格となるからです。実力に自信がある人も無い人も模試を受けてみることで、自分を客観視することができます。
勉強のペースメーカー
医学部での勉強は目標が立てづらく単調になりがちです。模試をチェックポイントすることで、勉強のペース配分がしやすくなります。
例えば、「○月の模試までにメジャー科を完璧にする」などといった具体的な目標を立てると、国試本番までの時間を上手に区切って計画を立てやすくなります。また、実力の近い勉強仲間がいる人は、模試ごとに勝負をするのも楽しいですよ。
本番の形式に慣れる練習
国試の本番は多くの人が一度しか経験しないものです。つまり、場慣れが難しい環境です。時間割は皆同じですが、個々に適した時間の使い方は千差万別です。例えば、特に集中力を維持したいブロックも人によって違いますし、休み時間の使い方もそれぞれです。
時間の使い方以外にも、自分なりのコツやルールを見つける機会になります。例えば、筆者は数十問ずつまとめてマークするのが好きでしたが、友人の中には必ず一問ずつマークすると決めている人も少なくありませんでした。
模試ではそういった自分に合ったお決まりの流れを見つけて、それに慣れることができます。慣れは当日の平常心につながります。本番に欠かせない一つの武器なのです。
足りていない知識の確認・新しい知識との出会い
模試では、自分の知識の不足部分に気づくことができます。また、過去問演習では登場しないような情報と出会うことがあります。自分だけが出会っていない知識を増やさないためにも可能であれば模試受験の機会は増やしたいところです。
模試を選ぶ
ここまで説明してきたような模試の役割を考えると、模試はできるだけ多く受けたいものだと感じますよね。しかし医学生の皆さんは大学の試験や部活のため忙しい方がほとんどでしょうし、経済的な制約がある方も少なくないはずです。ではどのように模試を選べばいいのでしょうか?模試を選ぶ際に念頭に置きたいことが2点あります。
自分に合ったものを選ぶ
模試の形式は各社本番に沿ったものになっていますが、web受験の形式や解説の作りなどが異なります。解説冊子のレイアウトはそれぞれですし、解説文のスタイルも違います。具体的には詳細重視か効率重視かといった違いなどです。
また、web上で受験や復習ができるものも、検索機能の有無や表示の形式などが異なります。模試は復習してこそ最大限に活用できるものなので、復習のしやすさを考慮して自分に合ったもの選びましょう。4・5年生は6年時の主軸を決める観点で模試を受けるのも良いかもしれませんね。
増やしすぎない
上にも述べたように、模試は新しい知識との出会いの場でもあり、他の受験者たちと同じ知識に触れておく重要な機会です。一方で、復習に手が回らなくなるようであれば効果が薄いのも事実です。増やしすぎてただ負担になるだけでは無意味です。
つまり、充分に余裕を持って復習できる最大回数を受けるのが理想ですよね。筆者のおすすめは、自分に合っている1社の模試を軸として年間通しで受け、残りの各社の模試を1-2回ずつ受けることです。特に国試前最終回のものは各社力を入れて作成しているので、しっかり復習すれば力になるでしょう。
2.模試の結果を分析する
さて、模試を受けた後の話に移ります。まずは模試の結果を分析しましょう。模試の結果は、分野ごとの結果が一目でわかるようになっており、自分の不得意な分野を見つけるのは容易でしょう。追加で注意して見たい結果が2つあります。まず、正答率が高いにも関わらず自分が間違えている問題です。
このような問題は、周囲の受験者の中では常識となっているにも関わらず自分の中には定着していない知識を問われている問題です。こういった知識をそのまま放置すると本番で足元を掬われる可能性が高く、特に必修問題で出題されると危険です。
もうひとつ注意すべき点は全国の正答率と自大学の正答率に差のある問題です。自大学の学生が揃って弱点とする知識は周囲だけをみていると軽視してしまいがちです。大袈裟に言えば「“周りのみんなもふわっと覚えている知識だから自分もおおまかに覚えておこう”くらいに思っていた知識が全国の学生の中では必須の暗記事項であった」といったことが起こりえます。
このような状況は、医学部の性質上仕方のないことですが、模試の結果分析でこれに気づくことができます。
3.模試の結果を活かした学習計画と実行
国試までの学習は、全体的なベースラインの維持・向上のための勉強と、苦手な領域を埋めてゆく勉強に分けて考えると整理しやすいです。過去問の繰り返し演習は前者、模試の復習は後者と言えるでしょう。前者を日々リズム良く継続してゆく中で、模試の後は後者の割合を増やすイメージです。
筆者はどちらの勉強においても、1日の問題数で計画を立てることを推奨します。一見すると日々の勉強時間が設定しにくいように見えるかもしれませんが、始めてみれば大体何問で何時間といった自分のペースがわかってきますので、時間も設定しやすくなります。
例えば、
◯月1日 | 国試第○回100問+模試の要復習問題20問 |
◯月2日 | 国試第○回110問+模試の要復習問題10問 |
◯月3日 | 国試第○回150問 |
…
といったように計画します。これを1、2ヶ月単位で計画しておけば、日々の学習計画に時間をかける必要がなくなります。問題数や予備日の頻度は余力に合わせて調節しましょう。模試結果を分析して見つけた注力すべき範囲は、必ず次の模試までには解消するように計画しましょう。また、怠け癖を防ぐためには自分が必ずこなせる最低ラインを設定することが望ましいです。
この学習計画を実行するにあたり、注意したい点があります。素早く解き進めることよりも、一問一問との出会いを大切にしてください。容易に解けた問題も、数分でいいので必ず他の選択肢検討や解説に目を通す時間を設けましょう。
特に6年の後半になってくると1日に解き進められる問題数も増え、過去問も見慣れてきてしまいますが、見覚えある問題も改めて解説や選択肢を読むと既知の情報の定着や新たな知識との出会いにつながります。こういった意識を持ちながら日々リズム良く勉強してゆくことで、多くの知識を自分の中で常識化させてゆくことができます。
4.国試に向けて知識を定着させる
国試に向けての勉強の優先順位を考えると、模試問題の演習は国試の過去問演習には劣ります。そんな中でも国試受験者としては模試で得た知識も常識として保持したいですよね。
筆者は「模試で出会った知識+過去問の中で何回解いても忘れてしまう項目」のノートを作ることを推奨します。
つまり普段の過去問演習で埋められない穴を列挙したものです。適宜見直して、自分の中で常識になったと感じたら項目を削除してゆきましょう。当然、直前期にこのノートを見直して、最後まで残った知識の穴を暗記で埋められるのがベストですが、仮に完全に暗記できなかったとしても、「このノートに書いてある項目以外は完璧だ」という自信にもなります。
終わりに
この記事では、模試の活用方法を説明させていただきました。この記事を参考に、負担にならず力になる計画的な模試受験をしていただけたら幸いです。国試の勉強で何より大切なのは自分のスタイルを早めに見つけて確立することです。
まだ迷いのある人は、まずはひとつと思って筆者の推奨をぜひ試してみてください。
CES医師国試予備校 講師【ペンネーム:たけ】
都内大学病院勤務。文系出身。好きな言葉は「捲土重来」。広い視野で学生とコミュニケーションを取ることを意識しながら指導にあたっています。私の記事が皆さんにとって参考になるものとなれば幸いです。